2023 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of 'Materialism' in Western Medieval Philosophy: Univocity and Equivocation of Matter
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22K12965
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
石田 隆太 同志社大学, 文学部, 助教 (10814585)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ペルソナ / 三位一体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、13世紀後半の物質主義を理論的に整備するための作業として、(1)トマス・アクィナスというスコラ学者に注目して、彼による質料の一義性モデルを再構成し、これから論文としてまとめる作業に移る段階である。具体的には、彼の初期著作『自然の諸原理について』ですでに見られる可能態における有としての質料という理解を出発点にして、質料をもつとされるものすべてに共通に見出される質料理解を明らかにしていく。(2)トマスの自然種に関する理論を再構築することで西洋中世哲学における自然哲学の領域について一定の見通しを立て、その成果を論文として公刊した。彼の自然種に関する理論は、単に生物種のみならず天使といった非物体的な実体をも射程とすることを改めて示した。言いかえるなら、彼の考える自然種の範囲がより広いということを意味するかもしれない。最後に、(3)近世のスコラ学者フランシスコ・スアレスから論を始めて、トマスの三位一体論における個体の問題を分析した成果も論文として公刊した。三位一体論は直接的には物質主義と無縁にも見えるが、個体とは何かという問題を考えるうえで密接な連関があり、その一端を明らかにした。 2、翻訳研究としては、(1)ドゥンス・スコトゥス著『レクトゥーラ』第2巻第3区分第1部第6問題、(2)トマス・アクィナス著『定期討論集 悪について』第16問第2項~第4項の翻訳研究を進め、(2)はすでに公刊済である。これらはいずれも本邦初訳である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画においては、上記「研究実績の概要」の1の(1)に相当する内容の実施を予定していた。このことに関して一定の成果をあげることができたので、全体として研究の進捗状況がおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画の通りに進めていく。すなわち、これまでボナヴェントゥラとトマスにおいて分析した理論モデルを彼らよりも後代の哲学者によるモデルと突き合わせる作業を本格的に行っていく。
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Causes of Carryover |
円安の影響により、購入を検討していた書籍が購入できずに少額の余りが生じた。次年度以降の書籍購入にあてることとする。
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