2023 Fiscal Year Research-status Report
京都学派社会存在論の包括的解明と国際的研究基盤の形成
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22K12967
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浦井 聡 北海道大学, 文学研究院, 特別研究員(PD) (50844370)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 京都学派 / 社会存在論 / 田辺元 / 西田幾多郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果は、(1)単著の出版、(2)英語・フランス語論文および(3)京都学派の一次文献の英訳・フランス語訳の出版、(4)ドイツでの招待発表に分けられる。 (1) 京都大学文学研究科の出版助成に採択され、博士課程進学時から本年度までの研究成果をまとめた単著『田辺元:社会的現実と救済の哲学』を出版することができた。 (2) 兼ねてから共同研究を行なってきたMiikael-Aadam Lotman(タリン大学講師)と、京都学派の基礎を造った西田・田辺の哲学的論争を分析形而上学の立場から再解釈する共著論文をEuropean Journal of Japanese Philosophyにて出版した。 (3) 本年度は田辺のもっとも重要なテキスト「種の論理の意味を明にす」(1937年)の全訳および初期の思索における重要文献「認識主観の問題」(1919-21年)の英訳を共にEuropean Journal of Japanese Philosophyにて出版することができ、英語圏の京都学派研究の足場を造り上げることができた。また、短いながらも田辺の初期のふたつのテキストのフランス語訳をLes Cahiers philosophiques de Strasbourgにて出版し、フランス語圏に田辺を紹介することもできた。 (4) 2月にはテュービンゲン大学に招待され、明治から大正期の浄土真宗における「ケノーシス」概念の議論を紹介する発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度に予定していた「種の論理の意味を明にす」(1937年)だけでなく、「認識主観の問題」(1919-21年)の英訳も出版することができた。他の田辺の「種の論理」の英訳も当初の予定より早く進んでおり、次年度中に本文の翻訳はほぼ終えられそうである。また、ENOJPでの学会発表やテュービンゲン大学での招待発表などで多くの海外の日本哲学研究者と交流を深めることができ、多くの収穫があった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度と同様に、各年度に配当してある文献の英訳とテキスト読解を進めていくことによって本研究の目的を達成できると考えている。また、テキスト読解の成果は適宜日本哲学の国際学会および各雑誌において公表していく。
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Causes of Carryover |
在外研究から一度日本に戻るかもしれなかったために予算の前倒し申請をしたが、戻らずにコペンハーゲン大学からタリン大学に移って在外研究を続けることになったため。前倒し申請の残額は、2024年度後期の在外研究の滞在費として使用する。
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