2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K12976
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
打本 和音 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (30812309)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 弥勒信仰 / 上生信仰 / 兜率天 / 浄土 / ガンダーラ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる2022年度は、兜率天、ならびに六欲天についての初期的な記述の収集作業と分析作業を中心に行った。また、天界に直接・間接にかかわる先行研究の整理を行った。 本研究課題の主たる検証対象である兜率天は、仏教的宇宙観のなかにおいて六欲天の第四天に位置していることから、いまだ欲を断ち切れない、迷いの世界として理解されてきた。一方で、釈迦や弥勒といった次代のブッダが地上に降り立つ前の待機場所としても機能しており、こうした聖的な面と俗的な面のバランスの悪さが、兜率天自体の評価を難しくさせる要因となっている。 そこで今年度は、六欲天のひとつとしての兜率天の立場を明かにすることを目標に、六欲天が古代の南アジア周辺域においてどのように理解され、受容されてきたかについての検証をすすめた。従来、仏教的宇宙観の検討に際しては『阿毘達磨倶舎論』など、内容的にも整理され、社会的にも影響の高さが認められた資料を中心にすすめられてきた傾向にある。しかし、今回はよりプリミティヴな段階の資料の整理作業を行うことで、教学的にも内容的にも整理されていない、混乱の見られる時期の天界に対する理解の傾向の一端が明らかになった。かかる調査の結果は、来年度に順次日本語の論文の形で公開される予定である。 なお、本来は今年度にインドでの調査を行う予定でいたが、コロナウイルスの蔓延により、予定に沿った調査を行うことが出来なかった。したがって、その代替として、上記にあげた資料整理や、すでに公刊されている図像資料の収集・分析を重点的に行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍に伴う蔓延防止等重点措置期間が続き、研究活動に大きな制限が生じたため。研究活動の優先順を再検討し、海外調査を次年度以降に延期することとした。その結果、当初の計画よりもやや進捗状況が遅れることとなった。 そこで、研究計画の見直しを行い、準備段階から進めてきた、インド・パキスタンを中心とする公刊図録等からの図像資料の収集と整理を優先的に行うこととした。また、天に関する文献資料の収集と読解についても継続して行った。本年度の成果については、2023年度に論文のかたちで公開される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、南アジアを中心とした地域における天界理解に関する文献資料の読解・調査を継続する。また、次年度以降の所属部局における研究会や、所属学会において他の研究者との議論や情報収集にも努めたい。なお、次年度は海外調査を行う予定であり、現地協力者との調整を進めている。
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Causes of Carryover |
本年度は、コロナ感染症に伴う蔓延防止等重点措置期間の延長に伴い、予定していた時期の海外調査を行うことが出来なかったため。次年度は、今年度に予定していた海外調査、並びに国内調査を実施する予定で計画をすすめている。
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