2022 Fiscal Year Research-status Report
西洋世界への日本仏教の「発信」と「受容」-英文テキストを手がかりに-
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22K12985
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
嵩 宣也 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (30921762)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 仏教モダニズム / 近代仏教 / 日本仏教の国際化 / 英訳史 / 英文雑誌 / 英文テキスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代の英文仏書の整備を行い、その全体像の素描することで「仏教モダニズム」の動態を分析するものである。 2022年度は、①英文仏書資料の蒐集と整理②本研究の分析方法にかんする発表と論文の執筆を行い、英文仏書の通史を描くための準備作業に取り組んだ。 ①英文仏書資料の蒐集と整理:東京大学・国立国会図書館の調査を通じて、明治初期のキリスト教系英文雑誌 Chrysanthemumと重要な先行研究となる博士論文の閲覧ができた。また、龍谷大学図書館でも同様の調査を行い、英文雑誌の資料蒐集とデジタルデータ化を進めた。これらの蒐集した資料に基づく目録を最終年度に発表予定である。 ②本研究の分析方法にかんする発表と論文の執筆:初年度となる2022年度は、英訳史が近代仏教研究にいかに資することができるのかを課題とし、発表と論文執筆を行った。たとえば、「日本仏教の欧米進出ー英文テキストをてがかりにー」(第1回近代南アジア民族誌研究会(中央大学), 2022年7月)と題して、発表を行った。考察を通して、近代化のなかで日本の仏教者たちが西洋世界に向けて、戦略的な思想の発信を行っていた事実を紹介した。さらに、“The Construction of History in English Translations of Shin Buddhist Texts: Through the Creation of the Bibliography of Japanese Buddhist Texts”(The Journal of World Buddhist Cultures (JWBC) 6 2023年3月 )と題する論文を投稿し、英文テキストが、アジアとヨーロッパの共同作業である「仏教モダニズム」の実態を解明するために重要な分析視角になり得る可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、新型コロナウイルス感染症の流行による影響から、海外での資料収集や調査が計画通り進まなかった。だが、その代わりに東京大学および国立国会図書館で研究にかんする資料を蒐集し、論文を執筆することができた。また、関連分野の研究者との意見交換・情報収集についてもオンラインを活用するなどして研究を遂行することができた。とはいえ、本研究を遂行するために重要な史料となるThe Buddhist Ray, Theosophistといった海外の英文雑誌の閲覧とその周辺状況の調査を進めることができなかったことから、研究は「やや遅れている」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、キリスト教と仏教の関係性に注目し、発表と論文の執筆を行う。とりわけ、大正時代に活況を呈した仏耶一元論への注目をとおして、キリスト教と仏教を折衷した「グローバル仏教」のあり方を考察したい。とりわけ、2冊の英訳『大乗起信論』が誕生する事実に注目し、大正期の英訳では、仏教者とキリスト教者が宣教のために、戦略的な協調関係を結んでいたことを明らかにする予定である。なお、これらの成果は、研究発表Translation of Modern Shin Buddhism: Acceptance and Transmission through prayer(The Asian Studies Conference Japan,2023年7月)、投稿論文「日本仏教の西洋世界への発信ー仏耶一元論と真宗セオロジー」で報告予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は新型コロナウィルスの流行により、カリフォルニア大学サンタクルーズ校およびカリフォルニア大学ロサンゼルス校の図書館での外部調査が不可能になった。その結果、旅費が残る結果となってしまった。さらに航空券の出費額の高騰に伴い、予算を検討しているうちに、購入予定であった機械類を入手することができなかった。本年度は、研究調査に必要な予算の目処が立ち次第に、迅速に必要な機材の購入を進めていきたい。
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