2022 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語圏における日本の伝統音楽の受容-日本音楽に関する独語文献の分析を通して-
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22K12999
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田辺 沙保里 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 基幹研究院研究員 (20913271)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 独語圏における日本音楽研究 / 日本音楽研究史 / 日本音楽受容 / ドイツ語圏 / 外国人による日本音楽研究 / 仲介者 / 比較音楽学 / 異文化受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の伝統的な音楽種目が、異文化を伝達した仲介者により、どのように記述されてきたのかを検証し、ドイツ語圏における日本音楽受容の一端を明らかにするものである。特に、比較音楽学が萌芽したドイツ語圏の文献を収集・分析することで、19世紀から20世紀にかけて、日本音楽の受容が遷移していく過程を考察する。これにより、民族音楽学としての学問的な成立過程に日本音楽がどのように関係したのか、また、異文化接触の場で形成された日本音楽表象の解明への展開を目指している。 初年度は、2022年9月に渡独し、ケルン在住の日本音楽研究者ハインツ=ディータ・レーゼ(Heinz-Dieter Reese)氏の協力の下、集中的な資料収集を実施した。レーゼ氏の自宅書庫に保管された日本音楽に関する膨大なドイツ語文献にアプローチできたことは、本研究における重要な足掛かりとなった。それらの文献は、レーゼ氏が1970年代にケルン大学に在籍していた頃から収集されたものであり、民族音楽学を専攻するドイツ語圏の学生が、その一分野としての日本音楽に如何に精通していくか、という過程を辿ることができる資料であるとも言える。 今回の文献調査においては、柘植元一により1986年に刊行された『日本音楽論著解題目録』[Tsuge 1986 Japanese Music : An Annotated Bibliography. New York: Garland Pub.]に掲載された154点のドイツ語文献を参考にしているが、この目録に含まれていないものも既に多数見つかっている。また、この目録は1983年末までの文献を対象としているため、それ以降に書かれた文献も視野に入れ、今後調査範囲を拡大させていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点で、Junker von Langegg(1828-1901)、Albert Thierfelder(1846-1924)、Viktor Holtz(1848-1919)、Hugo Riemann(1849-1919)、Heinrich von Bocklet(1850-1926)、Rudolf Lange(1850-1933)、Franz Eckert(1852-1916)、Adolf Fischer(1856-1914)、Heinrich Weipert(1856-1905)、Rudolf Dittrich(1861-1919)、Robert Lach(1874-1958)、Wilhelm Gundert(1880-1971)、Georg Schuenemann(1884-1945)、Joseph Laska(1886-1964)、鼓常良(1887-1981)、Robert Lachmann(1892-1939)、Eta Harich Schneider(1894-1986)、有馬大五郎(1900-1980)、Hans Eckardt(1905-1969)、Francis Llewellyn Harrison(1905-1987)、Siegfried Borris(1906-1987)、Herbert Zachert(1908-1979)、Kurt Reinhard(1914-1979)、Robert Guenther(1929-2015)、Walter Giesen(1935-1992)他、による計54点の文献を収集し、順次解読を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次回の渡独調査時までには、まず柘植の目録上の文献を網羅できるよう、引き続き国内での資料調査及びレーゼ氏の協力を得て文献収集を行う。それと同時に、既に得られた多数の文献の解読を進め、系統立てて整理することが急務である。収集については、研究協力者の尽力により期待以上の成果が挙げられているが、読解にあたっては、日本音楽各種目の専門家の助言を求めながら丁寧な翻訳に努める必要があるため時間がかかり、未だ纏まった論考が出せていない。作業のペースを上げ、次年度では学会発表及び論文投稿に漕ぎつけたい。
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Causes of Carryover |
資料収集の際に、PDFデータでの資料のやり取り、及び、写真データによる保存を活用したため、紙媒体は殆ど必要がなかった。そのため、コピー代等の予算が不要となった。 また、初年度の人件費は研究協力者への謝礼のみであり、ドイツ語添削等の外注が未だ不要であったため、余剰が生じた。 今年度は、航空券の高騰や物価高により旅費が予算オーバーしたため、次年度の使用計画においては旅費に充当したいと考えている。特に次回の渡独調査では、ケルンだけでなく、ドイツ国内の諸都市に足を運ぶ必要がある。そのため、今年度以上に旅費がオーバーする懸念がある。更に、日本国内の資料収集における移動も発生する可能性があり、旅費の予算調整が必須となる。
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