2023 Fiscal Year Research-status Report
中期ビザンティン美術における「十二大祭」プログラム形成期の再検討
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22K13005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
武田 一文 筑波大学, 芸術系, 助教 (90801796)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ビザンティン美術 / 中世キリスト教美術 / 聖堂装飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はキプロス島に遺る中世キリスト教聖堂を調査し、約30の聖堂で壁画の調査および写真撮影を実施した。これらは一般に公開されていないものも含まれており、また通常写真撮影は出来ないものである。キプロス考古局および各地の総主教座より調査許可を得た上で実施した。写真資料は筆者の企図する聖堂装飾プログラム研究の考察に資するものとなった。特にカコペトリア、アギオス・ニコラオス・ティス・ステギス聖堂やアシヌウ、パナギア・フォルビオティッサ聖堂では綿密な調査を実施できた。これらの聖堂は中期から後期に掛けての様々な時代に聖堂壁画が描き続けれられており、主題の選択について考察する上で重要な聖堂である。また聖堂装飾における「聖母の眠り」図像の位置付けの変遷を示唆するものとして、コリアニ、アギア・マヴラ聖堂やクールダリ、パナギア・クリソクールダリオティッサ聖堂を実見できた点は本調査で有意義であった。これらの聖堂についての論文を執筆中である。 併せて、22年度より筆者らによって筑波大学内で管理することになった旧東海大学ビザンティン聖堂調査資料について、本研究の対象となる聖堂を多く含むことから、調査を継続的に実施している。今後、これらの資料は電子データ化を進め、研究者間で広く共有する予定である。23年度はスライド資料の一部を電子化した。資料についての調査成果を日本ビザンツ学会全国大会で発表し、Waseda Rilas Journalにて研究論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外でのフィールド調査に制限がなくなり、ある程度の滞在期間を取って調査を行うことが可能になりつつある。23年度は研究上必要な聖堂を訪問し、撮影が実施できたことで論文執筆も実施できている。一方本務校勤務の都合上、当初実施予定であった冬季の調査が不可能な状態であり、調査実施が出来た聖堂数にやや限りがある点は課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き聖堂の実地調査と論文執筆を並行して進めていく。24年度は22年度に続き、夏季にギリシア、ラコニア地方の調査を行う予定である。地方性の強い作例が中心となろうが、辺境における聖堂装飾プログラムは筆者の関心の強いところであり、精力的に資料収集を行いたい。また、24年4月にワークショップで研究発表を行った「聖母の眠り」図像のモティーフ研究について、論文執筆を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画で実施予定であった冬季調査が学務の都合上実施できていないため、旅費として計上していた助成金が次年度使用額となっている。また、調査用デジタルカメラやPCが過去に取得したものを継続使用できており、更新に必要な支払いがなかった点もある。 本年度は為替相場の動向や航空運賃、調査地であるヨーロッパのインフレ状況から、夏季調査に昨年度より費用が掛かる見込みである。一部機材の更新も必要と考えている。加えて、22年度に筑波大学に受け入れた旧東海大学ビザンティン聖堂調査資料について、写真スライドのデジタル化を進めたいと考えており、この用途にある程度の費用が掛かる見込みである。また本年度発表予定の論文は英語での発表を予定しており、校正に費用が掛かる見込みである。
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