2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K13007
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田中 咲子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00641101)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 古代ギリシア美術 / 葬礼美術 / 死生観 / 彫刻 / 墓 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は次の4項目の活動を行った。①筑波大学長田年弘教授主宰「パルテノン彫刻研究会」における研究発表、②現地調査の打ち合わせを兼ねた研究会、③ギリシャ及びウィーンでの作品調査、そして④墓碑作品データの整理である。①の研究会では論点整理を兼ねて、墓碑に頻出する仕種の一つである「頬杖をつくポーズ」について、パルテノン・フリーズ東面の「デメテル像」との関連から論じた。②の現地調査のための研究会では、研究協力者を交え、これまでの研究状況に関する報告、及び調査先に関するレクチャーを行った。③のギリシャにおける現地調査は、9月2日より18日にかけて、アッティカ地方のヴァリ、ラヴリオン、ソリコス、スニオン、エヴィア県(エウボイア島)のエレトリア、レフカンディ、カルキス、そしてアテネ市内で実施した。アテネ市内における調査先はアテネ国立考古学博物館、ケラメイコス墓地遺跡である。エヴィア県は当初2023年度に調査を予定していたが、日本国内の研究者と合同で調査を行えることとなり、一年前倒しで実施した。ウィーンでは、美術史美術館の古代コレクションにおける古代ギリシアの墓碑や陶器の調査の他、19世紀に新たに整備されたウィーン市の共同墓地において調査を行った。また、墓碑作品データの整理については、青年像とりわけアスリート像として表された青年像について、近年の研究動向の調査を含めて行った。その結果、次年度、実見調査に追加すべき対象がいくつか明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では対象作例の整理をほぼ終える予定であったが、近年の研究動向の整理に時間を要していることから、その点では進捗が芳しくない。また当初は年度末~次年度(2023年度)初めにオーストリア、インスブルック大学にて開催のオーストリア考古学会で本年度の成果を口頭発表する予定であったが、インスブルック大学の施設設備上の理由で、学会開催が一年延期となった。そのため、予定していた口頭発表が1件実施できなかった。 他方、当初計画ではエヴィア県の調査を2023年度に行う予定であったが、日本国内の別の研究組織と合同で調査を行うこととなり、これを1年前倒しで実施することができた。また、ウィーンでの調査は当初、古代作品のみを対象とする予定であったが、ウィーン市墓地を調査対象に組み入れたことにより、新たな視点を本研究に導入することができた。 当初計画よりも進捗が遅れている面もあるものの、前倒しで行った調査などもあることから、概していえばほぼ当初計画通りといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、現在遅れている墓碑のデータ整理を進め、終了させる。現地調査については、9月にギリシャのヴォイオティア県テーベを中心とした調査を実施する。アッティカ県のピレウス博物館が所蔵する墓碑の実見調査が望まれることから、これについても実施する予定である。 また、昨年度開催予定であったオーストリア考古学会は2024年度初め(4月)に延期となっているが、2023年度中に国内で口頭発表と論文投稿を行うべく、準備を進める。
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Causes of Carryover |
現地調査に携行するノートパソコンと一眼レフカメラの購入を見合わせた。適切な機種が見つからなかったためであるが、他方、航空機の燃油サーチャージの高騰や円安に伴い、海外旅費が当初予算より嵩んだため、旅費を確保するのも理由の一つである。
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