2023 Fiscal Year Research-status Report
17世紀イタリアにおける共同制作絵画に関する包括的研究
Project/Area Number |
22K13011
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
倉持 充希 神戸学院大学, 人文学部, 准教授 (60845303)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 共同制作 / 17世紀イタリア / 専門画家 / 人物画家 / 美術の南北交流 / 静物画 / 風景画 / 北方画家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、17世紀イタリアにおいて人物画家と専門画家が共同で描いた絵画作品を調査するものである。具体的には、①主要作例の本格的な作品研究(2022~24年度)、②関連作例の収集と分類(2023~24年度)、③制作環境を踏まえた全体の傾向分析(2022~24年度)を行う。なお、医師の指導により2023年1月下旬より在宅勤務となり、4月下旬から産前休業に入り、2024年3月末まで育児休業を取得した。そのため、2023年度中の物品購入や現地調査などによる予算執行はなかった。以下、2023年4月の作業内容を記す。 ①主要作例の本格的な作品研究:2022年度の基礎調査の成果を踏まえ、2023年度には、風景画家カスパール・デュゲと人物画家ギヨーム・クルトワ(イタリアで活動したフランス人画家)が共作した連作(ローマ、パンフィーリ美術館所蔵)に関する作品研究を重点的に進め、成果公表のために必要な追加文献のリストアップを行った。先行研究でも指摘されているように、上記のパンフィーリ家は、アルプス以北の画家たちによる共同制作絵画を所有していたことから、この事例をさらに詳しく検討することで、ローマの有力なコレクターの共同制作に対する趣向が明らかになる。 ②関連作例の収集と分類:2023年度には、本研究を申請する以前の予備調査の際に収集した文献を利用し、共同制作絵画の作例の整理を進めた。今後、主要美術館のコレクション・カタログなどを追加購入し、関連作例の分類を進めることで、これまで行われてこなかった網羅的な事例収集が実現できる。 ③制作環境を踏まえた全体の傾向分析:2023年度には、ローマやミラノの芸術保護に関する参考文献一覧を作成した。これらの文献を購入し、作例を相互に関連付けて整理することで、地域による作例の分布や流行の時期などが明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、2023年1月から在宅勤務となったこと、2023年4月下旬から産前休業に入り、2024年3月末まで育児休業を取得したことから、2023年度の実質的な稼働期間は、4月下旬までであった。また在宅勤務でもあったため、新しい書籍の購入や、国内出張、イタリアでの現地調査などは行わず、前年度までの研究成果の整理と、2024年度の調査研究に向けた準備を行った。内容の詳細は、上記の「研究実績の概要」を参照。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査に関しては、2024年度の夏期と春期に敢行する予定だが、渡航が難しい場合は、書籍を購入し、上記の①~③の作業を進める。2024年度の研究の推進方策の詳細については、2023年度の稼働期間が4月のみであったことから、2022年度の実施状況報告書に記載した内容から大きな変更はない。以下、概要を記す。 ①主要作例の本格的な作品研究:作例を所蔵する美術館において、作品の観察と関連資料の閲覧を行う。個人蔵の作品については、所有者にアポイントメントを取り、個人邸を訪問する。今後の現地調査は、2023年8~9月にイタリア(ローマ・ミラノ)、翌年2~3月にイギリス(ロンドン・チャッツワース・ブライトン)、同年8~9月にスペイン・フランス(マドリード・パリ)、翌年2月にイタリア(ローマ・ナポリ)を予定している。 ②関連作例の収集と分類:共同制作絵画の場合、人物画家と専門画家とあいだの分担を確認する必要があるため、美術館等で作例を実見する。現時点での課題として、いくつかの関連作例について、文献上で印刷されている写真資料や現物の観察からでは、制作に携わった画家を同定するのが難しいことがある。一次資料(注文に言及した書簡や銀行の送金記録、財産目録など)が現存する場合には古文書館で閲覧することに加えて、ローマのヘルツィアーナ図書館などで複数の二次資料(カタログや研究論文など)を比較検討し、帰属が明らかな作例を優先的に考察する。 ③制作環境を踏まえた全体の傾向分析:共同制作絵画を好んで注文した美術愛好家に着目し、その周囲の文化的環境や彼らの芸術庇護に関する文献を収集して、全体像の把握に努める。
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Causes of Carryover |
2023年度の計画では、6月の時点で調査が可能かどうかを判断し、渡航が可能な場合、繰り越し予算を渡航費用に充て、渡航が難しい場合には、繰越予算を図書購入に充てる予定であった。しかし、2023年1月から在宅勤務になり、同年4月下旬から2024年3月末まで休業したことから、2023年4月中の予算執行はせず、翌年度に予算を繰り越した。 現地調査については、諸事情に鑑みて、渡航が可能な場合、繰り越し予算を渡航費用に充てる。具体的には、2022年度の実施状況報告書で示した通り、8~9月にイタリア(ローマ・ミラノ)に赴き、一次資料(共同制作の注文状況を示す文書や、ひとつの作品について複数の画家名が記載された財産目録など)と二次資料(主要作例に関するカタログや研究書など)の閲覧、作例の現地調査を行う。翌年2~3月には、イギリス(ロンドン・チャッツワース・ブライトン)において、作例の現地調査を行う。美術館に所蔵される作品については、美術館の資料室に保管されるファイルを閲覧し、先行研究やX線写真などの資料を網羅的に閲覧する。渡航が難しい場合は、次年度に購入予定の関連書籍を前倒しで入手し、共同制作にかかわる画家や愛好家の人的ネットワークの整理などを進める。
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