2022 Fiscal Year Research-status Report
ポピュラー文化を利用した「感情の政治」時代における市民的主体の可能性
Project/Area Number |
22K13014
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡部 宏樹 筑波大学, 人文社会系, 助教 (40834487)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ポピュラー文化 / ファン研究 / 市民社会 / カルチュラル・スタディーズ / ポピュリズム / 映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究全体としては、人々の欲望が商品化され流通する資本主義体制の社会の中で政治とポピュラー文化の境目が不明瞭になっている中で、いかにして民主的な市民社会を維持する主体というものを考えることができるかを、ファン研究と「感情の政治」研究との間で検討するものである。理論研究と事例研究の両面からファン研究と「感情の政治」研究を架橋することを目的として、「欠如の主体」という概念を鍵として文化・政治を横断する現象を分析するための主体概念を作り出すことが目標である。 初年度については、私の専門である映画・メディア研究やその隣接分野であるアニメ研究やアイドル研究などの知見を補助線として利用して、文化の領域と政治の領域を結びつけるための理論的準備を行った。映画理論における縫合理論とこの理論に立脚してフェミニズム映画理論に大きく貢献した「男性のまなざし」を再検討し、主体とイメージとの関係をより一般的に議論する理論的枠組みを検討する作業を行なった。この作業の中で、トランスメディア的に拡散するイメージとそれを対象として立ち上がる主体の関係を理論的に整理することができた。この成果は「平面と遊ぶ主体:アニメや漫画のキャラクター・イメージのトランスメディア的拡散」というタイトルで査読論文にまとめ、発表した。 本研究と問題関心をある程度共有するが独立した研究として「英語圏ファン研究の批判的受容と日本・東アジアからの応答」という研究グループを立ち上げ、このメンバーとの共同研究の相乗効果を産むこともできた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非常に順調に進行している。まず初年度のうちに「平面と遊ぶ主体:アニメや漫画のキャラクター・イメージのトランスメディア的拡散」というタイトルで査読論文にまとめ発表することができた。これ以外にも、査読を通過し掲載が決定したが未発表の論文が一本、査読を受けている途中の論文が一本あり、順調な研究のスタートを切ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度については順調に研究が進展した。計画では2年目から具体的な作品や現象の分析を行う予定で、こちらはすでに着手し、まだ発表はされていないが査読誌に投稿したものもある。助成期間の後半はラカン左派の政治理論と接続した議論をする予定であるが、それに向けての理論的先行研究の収集にも着手する予定である。
|
Causes of Carryover |
学内での予算使用について連絡不備があり、予算が残ってしまった。連絡の不備についてはすでに確認し問題解決したため、本年度中に予定通りに予算を執行する予定である。
|
Research Products
(3 results)