2022 Fiscal Year Research-status Report
Foodways in Queer Cinema: LGBT Film Festival Programs in Focus
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22K13017
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
久保 豊 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (30822514)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | クィア・シネマ / 食文化 / フェミニズム / セクシュアリティ / 映画祭 / トランスナショナル・シネマ / ジェンダー / 映画学 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は1977年から1989年までに開催されたサンフランシスコ国際LGBT映画祭のプログラムを対象に、本映画祭で上映された映画作品内の描写だけでなく、映画祭プログラムの中にどのような食文化をめぐる記述があったのかを調査した。その中でも特に、1980年代のエイズ危機において製作されたクィア映画において食の表象がどのように性的欲望や連帯を代替する表現として活用されたのかを検討した。また、食習慣の観点からクィア映画を分析するための理論的な枠組の構築を目指した。 以下、第一年目の主な研究実績について概略する。New Perspectives to Cinema Studiesで行った口頭発表"Eating In/Out: Food and Aging in Queer Cinema in East Asia and Beyond"では、アジアの映画にみる中年から高齢の性的マイノリティと食の表象の関わりを論じた。一方、クィア映画およびゾンビ映画における食表象に注目し、表象文化論学会第16回大会で組んだパネル「「食べていい?」をめぐる快楽:オーラル・セックス、ゾンビの食事、膨張する身体」では、欧米のクィア映画、特にドキュメンタリー映画『Hard Fat』が描く男性同士の食べる/食べさせる行為にみる性的欲望の所在について検証した。加えて、初年度はフランスのセリーヌ・シアマ監督の作品にみる食表象を特に分析し、「彼女の唇をもう一度味わうために──『燃ゆる女の肖像』にみる孤食と共食の表象」を『WASEDA RILAS JOURNAL』(10号)へ、「娘と母の、味蕾の向こう──『秘密の森の、その向こう』にみる少女たちの食事」『ユリイカ』(2022年10月号)へ寄稿することができた。初年度に挙げたその他業績についても映画と食に関するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
映画を含むポピュラーカルチャーにおける食習慣や食文化の表象に関する最新動向については、古典的な言説も含め、基本的な論点や理論的な枠組みを把握できた。それらの理論的枠組みの理解を応用して、第一年目の研究実績を導くことができた。しかし、食習慣や食文化に関する研究は想定していた以上に学際的かつ広範である学問的基盤の深さを確認したため、第二年目以降も引き続き理論面での強化を図る。 研究対象の一つであるサンフランシスコ国際LGBT映画祭/Framelineのプログラムの分析が予定していたペースよりも遅れている。1977年から2013年までのプログラムはすでに入手できたものの2014年以降のものへのアクセスが困難な状況にあるため、第二年目はこの問題への解決策を検討する必要がある。ただし、第一年目に計画していた1977年から1989年までの映画祭プログラムに関する分析は終わりつつあるので、おおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年目は大きく分けて以下の二つの研究調査を実施する。第一に、1990年から1999年までのサンフランシスコ国際LGBT映画祭のプログラムを参照し、①1990年代に起きたクィア映画の新しい波「New Queer Cinema」に分類される映画群、②性的マイノリティではないメインストリームの観客向けに製作された作品群を対象に、クィア映画にみる食習慣の役割にみる差異を検証していく。 第二に、2023年6月初旬にインドのムンバイで開催されるKASHISH Mumbai International Queer Film Festivalへ参加する。当初の研究計画では海外でのフィールドワークは予定していなかったものの、「若手研究における独立基盤形成支援(試行)」採択によって予算が増えたことに加えて、ムンバイの映画館文化をフィールドとする人類学者と研究交流を開始できたことにより、国際的なクィア映画祭と食の関係性をめぐる新たな事例として分析対象に加えた。これによって、本研究計画の実践的なアプローチをより一層深められると考えている。 第一年目および第二年目の研究調査とその分析結果に基づき、日本語・英語で論文を学術ジャーナルへ投稿するだけでなく、2023年7月開催の表象文化論学会にてパネル発表、2023年12月開催の日本映画学会にて発表を検討している。
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Causes of Carryover |
「若手研究における独立基盤形成支援(試行)」 に採択されたことにより、当初の研究計画よりも潤沢な予算を得ることができたため、次年度使用額が生じた。第二年目の研究調査では当初の研究計画を再調整し、次年度使用額と第二年目に請求した助成金と合わせることで海外での調査を実施する。具体的には、2023年6月初旬にインドのムンバイで開催されるKASHISH Mumbai International Queer Film Festivalへ参加し、クィア映画祭と食の関係性をめぐる研究調査へフィールドワークの側面を加えることを計画している。また、食と映画・ポピュラーカルチャーに関して知見のある研究者を多分野から招聘し、情報交換を行うための予算も計上予定である。
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