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2022 Fiscal Year Research-status Report

戦後上海における日本人居留民の言論活動の総体についての実証的研究

Research Project

Project/Area Number 22K13032
Research InstitutionShinshu University

Principal Investigator

藤原 崇雅  信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (70852432)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords戦後上海
Outline of Annual Research Achievements

まず、藤原崇雅「「ドモ又」の共済:戦後上海における日本人居留民の演劇活動」(『フェンスレス』 第6号、pp43-60、2022年9月)という論文を公開した。戦後上海において、日本人居留民が引揚げまでの間に過ごした集中区で行っていた演劇活動のうち、大正期の文学者である有島武郎の戯曲「ドモ又の共済」の上演を中心にその意義を考察した。本科研の研究計画においては、「上海市通志館上鑑委員会編『上海市年鑑』(中華書局, 1946~47)に戦後発行された刊行物」を調査したうえで、「その文献の意見と蒋介石派国民党の管理方針との偏差を析出」するとしているが、この論文はその計画が実現したものである。
次に、藤原崇雅「武田泰淳「審判」と上海現地メディア:日本人居留民宣導政策とその問題点」(日本近代文学会秋季大会、2022年10月)という発表を行った。武田泰淳「審判」は、戦後上海を舞台とした日本近代文学作品であり、当地の居留民が主人公として設定されているが、その主人公のありようを、戦後上海現地資料との偏差を確認する観点より参照しつつ論じた。この論文も、上記研究計画が実現したものである。
また、外村彰編『昭和の文学を読む:内向の世代までをたどる 』(ひつじ書房、2022年4月)における「第九章 戦後派と無頼派」(pp.202-217)と、石川巧、大原祐治編『占領期の地方総合文芸雑誌事典:下巻 西日本編(滋賀県~沖縄県)』(金沢文圃閣、2022年6月)における「和歌山県」の項(pp.57-68)を執筆した。前者では日本近代文学における戦後文学者の作品を紹介するなかで、上海居留経験を持つ武田泰淳の文業を検討し、後者では戦後の和歌山県の地方雑誌を中心とした文学状況を説明するにあたって、当地に引揚げ者らが戻ってきていたことを検討した。部分的ではあるが、これらの実績も本科研の研究計画が実現するものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究計画においては、1年目で「OPACで『上海市年鑑』の目録に掲載されている文献の所蔵調査」を行い、その上で「OPACでヒットする文献の複写依頼/ヒットしない文献の現地調査」を実施した上で、「入手した文献の記事や広告を確認し未見の文献がないかを追加調査」し、「追加調査を含む文献全体を様式に打ち込み、凡例と併せ目録を作成」するとし、2年目で「作成した目録上から主要な文献を選定して整理・リスト化」し、「リスト化した文献のうち中国語のものを選定し日本語へと訳出」した上で、「訳文を中国語母語話者の協力研究者に依頼しネイティブ・チェック」を受け、「ネイティブ・チェックを踏まえ完成させた訳文に対し解説を作成」するとし、3年目で「訳出した資料のなかから主要な文献を選定」し、「その文献の意見と蒋介石派国民党の管理方針との偏差を析出」した上で、「〈グレーゾーン〉理論を踏まえ分析した文献の書き手の立場を分類」し、「戦後上海における居留民の主体のありようの総体を再度図式化」するとしていた。
昨年度は各種複写依頼や古書店を通じた上海改造日報館関係の図書の購入、またアジア・アフリカ図書館(東京都三鷹市)へ出向いての実施調査を通じて、戦後上海の文献をある程度入手した。ただし、計画では1年目にこの調査をある程度終えておく予定であったものの、計画に記していた文献調査の全てを実施することはできなかった。
一方で、【研究実績の概要】のところに記したように、「「ドモ又」の共済:戦後上海における日本人居留民の演劇活動」や「武田泰淳「審判」と上海現地メディア:日本人居留民宣導政策とその問題点」などの成果を公開することができた。これらは、3年目に行うはずであった調査資料を用いた研究を先取りして行ったものである。
したがって、資料調査についてはやや遅れているものの、業績公開については当初の計画以上に進展していると言える。

Strategy for Future Research Activity

まず、1年目の研究計画で「OPACで『上海市年鑑』の目録に掲載されている文献の所蔵調査」を行い、その上で「OPACでヒットする文献の複写依頼/ヒットしない文献の現地調査」を実施した上で、「入手した文献の記事や広告を確認し未見の文献がないかを追加調査」し、「追加調査を含む文献全体を様式に打ち込み、凡例と併せ目録を作成」するとしていたが、行うはずであった文献調査を一部しか達成することができなかった。エフォートの問題もあるが、ここでの遅れをできるだけ取り戻せるよう、資料調査を引き続き行っていきたい。
次に、2年目の研究計画で「作成した目録上から主要な文献を選定して整理・リスト化」し、「リスト化した文献のうち中国語のものを選定し日本語へと訳出」した上で、「訳文を中国語母語話者の協力研究者に依頼しネイティブ・チェック」を受け、「ネイティブ・チェックを踏まえ完成させた訳文に対し解説を作成」するとしていたので、これは当初の計画通り、次年度進めていきたい。
さらに、3年目で「訳出した資料のなかから主要な文献を選定」し、「その文献の意見と蒋介石派国民党の管理方針との偏差を析出」した上で、「〈グレーゾーン〉理論を踏まえ分析した文献の書き手の立場を分類」し、「戦後上海における居留民の主体のありようの総体を再度図式化」するとしていた。1年目に研究を進めてみて、調査を整理しつつ成果公開を並行して行っていけることが明らかになったので、次年度も業績を公開できないか検討する。
なお、科研費の申請時は新型コロナ・ウィルスの対策で海外渡航が難しく、特に本研究の調査対象としている資料が所蔵されている機関が多くある中華人民共和国への渡航が難しかった。しかしながら、感染症対策のあり方が変わってきているので、研究計画に一部記しておいた現地調査や、国際学会での成果公開も視野に入れつつ、研究を進捗させていく必要がある。

Causes of Carryover

物品購入を翌年以降に行うことに計画を変更したため。
行うべき資料複写について、その一部を翌年以降に行うことにしたため。
ネイティブ・チェックあるいは資料整理を翌年以降に行うことにしたので、それらに使用する人件費の翌年以降になったため。

  • Research Products

    (4 results)

All 2022

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results) Book (2 results)

  • [Journal Article] 「ドモ又」の共済:戦後上海における日本人居留民の演劇活動2022

    • Author(s)
      藤原 崇雅
    • Journal Title

      フェンスレス

      Volume: 6 Pages: 43-60

  • [Presentation] 武田泰淳「審判」と上海現地メディア:日本人居留民宣導政策とその問題点2022

    • Author(s)
      藤原 崇雅
    • Organizer
      日本近代文学会秋季大会
  • [Book] 占領期の地方総合文芸雑誌事典:下巻 西日本編(滋賀県~沖縄県)2022

    • Author(s)
      石川 巧, 大原 祐治
    • Total Pages
      238
    • Publisher
      金沢文圃閣
    • ISBN
      978-4-910363-73-8
  • [Book] 昭和の文学を読む:内向の世代までをたどる2022

    • Author(s)
      外村 彰
    • Total Pages
      296
    • Publisher
      ひつじ書房
    • ISBN
      978-4-8234-1138-0

URL: 

Published: 2023-12-25  

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