2022 Fiscal Year Research-status Report
Global circulation of Japanese Classics: Remapping Hojoki's first Italian Translation and its Reception History
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22K13061
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
Pradhan Gouranga 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 博士研究員 (40847224)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | hojoki / basil bunting / Marcello Muccioli / 方丈記 / バジル・バンティング / ムッチョリ / 山田孝雄 / 下位春吉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、20世紀初頭における古典名作『方丈記』の海外受容の一側面を明らかにすべく、1930年代初頭にイタリアの日本研究者ムッチョリ(Marcello Muccioli)により行われたこの作品の初のイタリア語訳を研究対象とするとともに、このイタリア語訳の更なる受容を追跡しながら、「世界文学」および「翻訳研究」の視点から日本の古典文学の国際的な展開の在り方を考察することを目指している。かかる研究目標のうち、研究計画初年度の令和3年度(2022年4月~翌年3月まで)には、以下の研究を実施した。 まず、ムッチョリが『方丈記』を訳した1930年前後の彼の伝記的な情報および彼の日本古典文学への関心について情報収集を行った。並行して『方丈記』のイタリア語訳の序文を書いた帝国東北大学の教授であった山田孝雄(1873-1958)について富山市立図書館にある山田孝雄文庫にて資料調査を行い、山田のイタリアとの関係について文献調査を行った。これまでの調査から、山田は当時のイタリアで活躍した下位春吉など日本人を通してムッチョリと知り合い、『方丈記』のイタリア語訳の序文を書くことになったと思われる。また、山田孝雄と下位春吉の関係に関しては、イタリアに留学した日本の物理学者である田中館愛橘およびローマ字社から出版された雑誌「Romazi no Nippon」などを通して資料収集もおこなった。 次に、このイタリア語訳の更なる受容を明らかにすべく、イギリスのモダニスト詩人バジル・バンティングのアダプテーション作品"Chomei At Toyama"を分析し、バンティングによる『方丈記』の理解についても調査中である。 これまで得られた研究成果は、日本比較文学会や日本説話文学会にて口頭発表を行った。これから研究成果を研究論文としてまとめ、海外の学術誌への投稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に計画していた、ムッチョリの伝記的な情報を収集し、彼の日本の古典文学への関心の背景に、1920・30年代における日本とイタリアの政治的な深い関係およびイタリアで活躍した日本人の影響が高かったことを確認できた。当初計画していた、ムッチョリが在学し後に教授となったナポリ東洋大学で資料調査は、コロナ禍の影響で実施できなかったが、ナポリ東洋大学でムッチョリから直接教えを受けたイタリアの日本研究者とメールなどでやりとりし、情報収集を行った。また、ムッチョリが関係していたイタリアの大学図書館とメールなどで連絡をとり、情報収集も行うことができた。第一次世界大戦前後におけるムッチョリの活躍は、彼の日本への関心を知る上で重要であり、これから継続して情報収集を行う。
現時点では、ムッチョリと下位春吉の直接的な関係を実証できる文献は確認できていないが、下位春吉は山田孝雄と田中館愛橘と関係を持っていたことについて確認できた。そして本年度は、計画通りに下位春吉のイタリアにおける文学活動に関する先行研究の整理と資料調査を行った。これまでの調査から、下位は文芸誌を作り、日本の文学作品をイタリア語に翻訳してイタリアに日本文学を紹介していたことが確認できた。今後、下位はムッチョリ訳『方丈記』にどのように関係していたのかについて継続して調査を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画次年度の令和4年度(2023年4月~翌年3月まで)には、次の研究を実施する。まず、引き続きムッチョリの伝記的な情報収集を行いながら、彼の下位春吉や山田孝雄など日本人との関係について調査を行う。そして、1930年代という歴史的な時空の中、日本の知識人は海外の日本研究者となぜどのような関係を持ったのか、とりわけ『方丈記』の海外受容の視点から調査を行う。
ムッチョリの『方丈記』訳の更なる流通を追跡し、英国のモダニスト詩人バンティングによるその享受について調査を行う。とりわけ、当時イタリアで活躍したエズラ・パウンドやT・S・エリオットなどモダニスト文学者らとバンティングの関係に焦点をあて、1930年代初期のバンティングの文学活躍に関する先行研究の整理と文献収集を行う。並行的にバンティングのアダプテーション作品Chomei at Toyama(1933) を分析し、バンティングの『方丈記』解釈について考察する。特に、彼がなぜ『方丈記』を翻案の題材とし、どの点においてこの作品を評価したのかを明らかにする。なお、これまでに得られた研究成果は、国内外の学会などで研究発表を行い、研究論文にまとめて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外での資料調査がコロナ禍のため実施できず、それ故に次年度使用額が生じた。2023年度には2022年度に実施できなかった海外資料調査に加え、研究成果の発表のための国内外の学会大会参加旅費および論文執筆に係る謝金、資料収集等での使用を計画している。
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