2023 Fiscal Year Annual Research Report
21世紀アメリカ小説における時間表象に関する研究――ドン・デリーロを中心に
Project/Area Number |
22K13071
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平川 和 神戸大学, 人文学研究科, 助教 (40804141)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 現代アメリカ文学 / 時間論 / 詩的言語論 / ドン・デリーロ / マーガレット・アトウッド / 反転性 / 逃走線 / 思弁的小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代アメリカを代表する作家ドン・デリーロの小説などを手掛かりにしながら、21世紀を生きる人間主体がどのような時間世界を経験しているかを探る試みである。最終年度は、デリーロの長編小説Zero K(2016)と最新作である中編小説The Silence(2020)に焦点を当て研究を行った。昨年度に引き続き、「人体冷凍保存」をテーマにしたZero Kを時間表象と詩的言語という観点から分析し、人間を非歴史化的する人体冷凍保存に対し、デリーロの詩的テクストが歴史化を促すものとして対置される可能性が明らかになった。この研究成果は、"Indulging in the Poetic Jouissance: Language, Art, and Politics in Don DeLillo’s Zero K"(『英米研究』48号)と題した論文で発表した。 また、時間表象の分析を進めていく上で、デリーロ作品において詩的言語や不眠症が重要な要素として機能していることが明らかになった。そのため、詩的言語と不眠症という観点からThe Silenceを分析し、その研究成果を2023年12月に行われた日本英文学会関西支部第18回大会で「デジタル・テクノロジーの死――Don DeLillo, The Silenceが描くバベルの塔の崩壊 」という題で発表した。この発表内容については現在論文投稿中である。 また、昨年出版したマーガレット・アトウッドの短篇"Impatient Griselda"についてのエッセイ「反転の力学」の内容を発展させたものを、2023年6月に行われた日本アメリカ文学会関西支部例会において「物語の「逃走線」的デザイン――Margaret Atwood, “Impatient Griselda”を貫く反転の力学 」という題で発表した。この発表内容については現在論文投稿中である。
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