2023 Fiscal Year Research-status Report
Female Bodies in Hemingway's Fictions: Race, Gender, and Primitivism
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22K13083
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
古谷 裕美 関東学院大学, 建築・環境学部, 准教授 (80911651)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 身体分析分析 / 女性表象 / ヘミングウェイ / ジェンダー / 原始主義 / 性的逸脱性 / 人種 / 同性愛 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画どおり、JFK Libraryにおいて実施したヘミングウェイの未発表原稿調査に基づき分析を進め、一部、成果発表を実施した。女性や非西欧圏の人々と動物との交差的な表象および、異人種混淆性にまつわる描写が性的逸脱性と関連付けられており、そうした表象が、原稿調査によって原稿編纂時の修正/削除対象となっていたことが判明している。
2023年度は、異人種混淆性と身体表象という観点から研究を深め、女性の身体に加え、同性愛的欲望と非西欧圏の身体表象という観点から、分析/研究発表を実施した。2023年5月、American Literature Association (ALA) 34th Annual Conferenceにおいて、The Hemingway Society 主催のパネルセッション “Paying Attention to Gender: Hemingway Studies in/and Transition” に参加し、研究発表を行った。3名のアメリカ人研究者と共にセッションを行い、その後、フロアーを交えてディスカッションを行った。発表タイトルは、"Castration, Homosexual Desire, and Orientalism in 'God Rest You Merry, Gentlemen" である。異人種越境性や動物混淆生が、有色女性の身体に投影される場合には「官能性」や「堕落」、「再生」といったコノテーションを内包する一方で、そうした逸脱性が男性の身体と関連付けられる際には「死」や「行き詰まり」、「性的倒錯性」が示される傾向がある点について論じた。今後の研究においては、異人種越境性や動物との交差的な描かれ方、および原始主義的観点から、男女の身体表象に見られる相違、共通性、独自性を比較/考察しつつ、女性の身体の描かれ方を浮き彫りにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
プロジェクト1年目と2年目の情報収集において、当初予定していた調査対象の大部分に関して順調に収集が進み、分析結果が得られた内容については、成果発表を実施している。膨大な量の調査内容は、質的分析ソフトMAXQDAを用いて、女性および同性愛者の身体、人種性、動物との交差性、官能性、堕落、再生などのキーワードを用いて、コーディング/分析を進め、2024年度は最終的な成果発表の準備を進めている。
1年目の2021年度には日本ヘミングウェイ協会全国大会(於: 九州大学西新プラザ)において、ヘミングウェイ・テクストにおける野生動物とその否定性としての檻の中の愛玩動物表象という研究視点を導入し、カナリアが隠喩として内包する閉塞性、抑圧性が身体表象に及ぼす影響について研究発表を行った。また、発表後は、日本ヘミングウェイ協会学会誌『ヘミングウェイ研究』において、論文掲載(査読有)された。2年目は、動物表象に加えて、異人種混淆性と身体表象という考察を展開し、非西欧圏の人々の身体に投影される逸脱性がテクストに及ぼす影響について研究を進め、その内容に関して、2023年5月に開催された第34回ALA国際学会で研究発表を行った。プロジェクト最終年度の2024年度には、動物表象や、異民族性に関する男女の身体表象の相違という観点から分析/研究をさらに展開する。特に、「人種」、「ジェンダー」、「原始主義」というキーワードに基づいて、同性愛者の身体および女性の身体に焦点を当て、研究を進めていく。2024年7月にはスペインのサン・セバスチャンとビルバオで開催される 2024 Hemingway Society Conference におて研究発表を行う予定であり、研究発表後には学会誌に論文投稿する予定である。概して、原稿調査が順調に進み、その後の分析、研究発表、論文執筆に関しても順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト最終年度の2024年度は、原稿調査で収集したデータの分析結果をまとめ、異人種越境性、原始主義、動物との混淆生が示唆される身体表象についての研究をまとめ、成果発表を行う。2024年7月には、2024 Hemingway Society Conference (in Spain) に参加して、研究発表を実施する予定である。発表タイトルは、”Female Bodies, Primitivism, and Spaces in True at First Light and Under Kilimanjaro” である。ヘミングウェイの描くアフリカを舞台とする作品では、自然に近い存在としての野生動物というメタファーが女性の身体と交差的に描かれる場合に、その女性の剥き出しの「生」や「欲望」が提示され、脱人間中心主義的な要素を持つ女性の身体には、性的逸脱を含む様々な象徴性が刻み込まれていく。本発表では、男性の身体表象と比較検討しつつ、有色女性の身体表象を分析し、ジェンダー、人種、原始性の交差性という観点から、女性表象を再読/再評価するものである。研究発表を実施後には、国内外への学会誌への論文投稿を予定している。
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Research Products
(1 results)