2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13084
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
宮原 駿 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (80907593)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ジェイムズ・ジョイス / ユリシーズ / ダフネ・デュ=モーリア / 香り |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』における嗅覚表象を扱った。5月には「『ユリシーズ』を 嗅 ぐ ――ブルーム の 嗅覚的放浪 と 帰還」というタイトルで日本英文学会全国大会において口頭発表を行い、この内容に基づいて『Osaka Literary Review』に論文「おかえり、ブルーム――『ユリシーズ』における嗅覚的放浪と帰還」を提出した。本論文においては、主人公ブルームがアイルランドのダブリンを放浪する中で様々な香りに導かれつつも、最終的には自らの香り、妻の香りのある家へと帰り着くまでを辿った。 次いで、次年度の研究の準備として、ダフネ・デュ=モーリアの作品を多く紐解きつつ、2月には作家の縁の地であり、作品の舞台にしばしば用いられるイギリスのコーンウォール地方を訪れた。当地でのフィールドワークを通じて、作品に描かれる地理の実際の状況や、香りのあり方などを調べることができた。フィールドワークの後には、デヴォン州エクセターのエクセター大学へと向かい、数日に渡り作家の手稿やタイプ原稿、書簡等を閲覧した。 3月には本研究の大きなテーマである香りに関する文献を収集するため、フランスのパリにおいて、サン・ジュヌヴィエーヴ図書館と、公立情報図書館で様々な文献資料を閲覧した。日本国内では入手に時間がかかるフランス語文献を実際に手に取って閲覧した。研究に必要な部分のスキャンデータを入手し、特に重要度の高い文献に関しては帰国後購入することとしたことで、研究資料の入手にかかる時間と、必要のない文献を購入する可能性を削減することができた。また、香り文化への理解を深めるために、フラゴナール香水博物館を訪れ、香水の発展の歴史に触れることができた。 3年目に中心的な研究対象となる予定であるL・G・ギボンのスコットランド三部作にも目を通すことができ、研究の下準備ができたと感じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、当初の予定通りにジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』における嗅覚表象に関して研究発表を行い、その内容に基づいて論文を発表することができた。 また、次年度に新たに進めていくダフネ・デュ=モーリアに関しても、その作品のおよそ半数に目を通し、先行研究にも一定量触れることができた。また、作品の理解を深めるためのフィールドワークや手稿等の閲覧も予定通りに実施した。 香りに関する文献についても、初年度として十分なだけの文献をパリで入手することができ、香り文化への理解を深める足がかりとしてフラゴナール香水博物館を訪れた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に当たる2023年度では、デュ=モーリア作品における嗅覚表象に関する研究をまとめることになる。研究の進捗が順調に運べば、12月の日本英文学会関西支部大会において、その成果を発表し、その後に論文としていく。 また、同時に次年度に研究の中心となるL・G・ギボンのスコットランド三部作に関しての先行研究や調べたり、ヴァージニア・ウルフに関する研究の下準備を進めたい。また、昨年度に収集した香りに関する文献に順次目を通していく必要もある。 2月、または、3月には、ギボンに関する研究を深めるために、スコットランドや赴くことを予定している。研究の進捗次第では、ウルフに関する文献を紐解くためにイングランドにも足を向ける可能性がある。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも旅費の支出を抑えることができたため、2022年度の予算に未使用額が生じたため。これを次年度に回すことによって、ギボンに関する調査でスコットランドに赴く際により長く調査を遂行できる。また、研究の進捗状況によってはウルフ研究のためにイングランドに行くために使用することになる。加えて、物品費、特に、図書の購入費用の補填にも使用する。
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Research Products
(2 results)