2022 Fiscal Year Research-status Report
20世紀フランス思想における文学と哲学の交差――バタイユ思想を起点として
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22K13095
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
横田 祐美子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 助教 (30844170)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ジョルジュ・バタイユ / 20世紀フランス思想 / 文学と哲学の交差 / リュス・イリガライ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ジョルジュ・バタイユの思想を手がかりとしながら、現象学や脱構築思想などに位置づけられる20世紀フランスの様々な思想家において文学と哲学の交差がなぜ/いかにして生じたのかを、概念的思考に対する批判とその乗り越え、文学言語の可能性という観点から包括的に捉え直すことである。 2022年度は本研究の基盤となる「文学言語の探究」をテーマに研究を遂行した。具体的には、「非-知」という概念把握とは異なる思考形態がバタイユにおいて詩的・文学的な表現形式と必然的な呼応関係にあることを示したうえで、論証や注釈とは異なる形式で書かれたエクリチュールの特性について検討した。それによって、伝統的な哲学のテクストが一義性にもとづく言葉と意味の硬直した関係を構築してきたのに対し、文学言語にもとづくテクストが両者の関係をより自由で流動的なものとしていることを明らかにした。こうした考察から、バタイユが「横滑り」や「インクの染み」、「真面目さの彼方」などの表現によって言わんとしていたことは、言葉と意味の一対一対応関係を超えた広がりであり、そうした言語作用が当時の哲学的な主題においても等閑視されていたわけではなかったことが示された。 この成果は、哲学史家マーティン・ジェイらによってバタイユ思想との類似性が指摘されているリュス・イリガライのエクリチュール研究とも接続したうえで、日仏女性研究学会の査読付論文として刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究では、論理的な言説とは異なる形式で書かれた詩的・文学的とされるテクストのなかで言葉と意味がいかなる関係を結んでいるのかをある種ロジカルに説明することができた。その際、当初の研究実施計画に記載した文献だけでは足りず、それとは異なるイリガライらの文献をも考察対象として取り上げることとなったが、バタイユ思想を導きの糸としながら20世紀フランス思想における文学言語の探究を行う研究計画に沿ったまま、その可能性を広げることができたのではないかと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は「現象学と文学」をテーマに研究を進める予定である。バタイユが活躍した時期はフランスにおいて現象学研究が花開いた時期と重なっており、フランス現象学の一部の論者たちもまた、文学言語のうちに現象学的思考に先立つ世界との接触を表現する可能性を見出していた。そこにはバタイユやブランショへの言及も見られるため、前年度の研究成果を踏まえながら、現象学において文学と哲学が交差するポイントを明らかにすることを試みる。
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