2022 Fiscal Year Research-status Report
A Combined EEG and Eye-Tracking Study on Semantic/Pragmatic Processing of Demonstratives
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22K13115
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅谷 友亮 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 助教 (50826625)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 視線計測 / 指示詞 / 直示 / 照応 / 認知プロセス / 意味・語用論 / 言語類型論 / 脳波計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人はどのような心理・認知的過程を経て指示詞選択を実現しているのか、そしてそれは言語や文化によってどのような変異があるのかを解明することを目指す。本年度は、(i)実験準備、(ii)直示用法における指示詞の通言語的なオンライン実験研究、(iii)照応用法における指示詞(日本語)の視線計測研究を行った。 まず(i)に関して、高精度の視線計測器を購入し実験設備や環境を整えただけでなく、PsychoPyなどの実験作成や刺激呈示のソフトウェアを利用し様々な実験デザインを試みた。そのうち、以下の(ii)と(iii)の実験に関して実際に参加者を募りデータ取得した。 次に(ii)に関して、指示詞(直示用法)を選択するために必要な遠近判断の心理プロセスに関する実験調査を言語横断的に行った。話者は指示詞の産出の際に聞き手を考慮すること、または何らかの判断基準をもって遠近判断することがあるが、それには一定の言語文化差があると想定でき、言語によってどのように異なるかを調査した。先行研究の方法論を参考にしつつ、聞き手、比較対象、特定の基準値の3つの観点から条件を変えて、6つの言語(日本語、スペイン語、アイルラン語、英語、イタリア語、フランス語)の母語話者に対して指示詞選択をさせる実験を実施した。実験の結果、各言語の指示詞に関して比較的観点から様々な異なる特徴が発見または実証された。纏まった研究成果が得られた為、次年度6月の日本言語学会の春季大会で報告する予定である。 最後に(iii)に関して、日本語指示詞コアソを照応用法として使用する際にどのように文脈上の先行詞を探索するかを調査した。文章刺激を作成し指示詞を選択もしくは先行詞を特定するタスクを行う実験を実施し被験者の眼球運動(視線)を観測した。しかし、期待した実験結果は現れず、次年度に実験デザインを修正し再び実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、本研究内容と直接は関連しない共同研究を新規に2件開始した。1件目は存在表現の英独対照研究でオンライン実験を実施しデータを取得した。2件目は日本語助動詞ラレルとその構文の関連性に関する研究であり、視覚世界パラダイムという手法を用いた視線計測実験を行った。以上により、本研究に従事する時間がその分だけ限られ、当初の予定またはそれ以上に計画が進展したとは言えない。しかし、方法論的に本研究に役立てられる技術的成果があり、来年度以降の実験方法論にも十分貢献する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、高いサンプリングレートでデータを取得できる高性能な視線計測器を用いて本格的に視線計測研究を推進させる。日本語に焦点化しコアソの中から指示詞を一つ選択する際にどのような認知プロセスが働くかを眼球運動の観察を通して明らかにする。特に、聞き手、比較対象、特定の基準値、背景尺度という観点から実験を作成し実施する。最終的に、有効的な実験研究の成果は国際雑誌に投稿し報告を行いたい。また、今年度に実施した、通言語もしくは言語類型論的な実験研究を次年度も続ける。対象言語を拡げてオンライン実験を行い、取得した実験データを比較・対照させて新たな知見を得る。
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Causes of Carryover |
想定していた打ち合わせの為の出張費用が遠隔会議により必要なくなり僅かな次年度使用額が生じた。翌年度における必要な備品もしくは出張費用に充てる。
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