2022 Fiscal Year Research-status Report
初・中級日本語学習者の音読のわかりやすさを向上させるための指導法開発
Project/Area Number |
22K13146
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
JIN ZHU 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 特任研究員 (20790033)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 初級日本語学習者 / 音読 / 音声特徴 / 発話速度 / ポーズの位置・頻度・長さ / 音読指導 / 指導法開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語教育の現場において、教師がよく学生に会話文や読解文章等を音読させる。しかし、日本語学習者の声に出して読んだ日本語が聞き手にとって分かりにくいことがある。聞き手を意識した音読指導が必要であるが、現状では学習者の音読のわかりやすさを向上させる音声指導法がほとんど見当たらない。本研究は、まず初級と中級日本語学習者を対象に音読調査を行い、音読音声の実態を明らかにする。その上で、日本語学習者にとっての効果的な音読指導法を開発することを目的として設定した。具体的に、①初級および中級日本語学習者にそれぞれレベルにあった日本語の文章を読んでもらい、録音する、②録音した音声データを音響分析し、音声評価を行う、③学習者の音読音声の実態に基づいて聞き手にとって分かりやすい音読の仕方を検討し、指導法を確立する。 2022年度は、当初計画通り、初級日本語学習者の音読データの収集と母語話者の音読データとの比較分析を行い、分析結果をまとめ1件の研究発表を行った。研究成果として以下の2点を報告する。 第一に、初級日本語学習者は音読材料文の内容を理解したものの、音声処理に時間かかる学習者が多く、発話速度は一定ではないことが判明した。学習者間の発話速度の差が大きく、学習者内にも大きなばらつきがある。初級段階からモーラの等時性を強調し、発話速度を重視した読み方の指導が大切であると考える。 第二に、初級学習者はポーズの置く位置とポーズの長さがわからない。学習者が音読する際に、文末にポーズを置くが、文中の場合、どこにポーズを置くべきかはあまり意識していないことが観察された。これは、日本語の文字列の分節能力が原因であると考えている。語の一部を独立要素として認識してしまい、一語一語で読んでしまう可能性がある。教師が音読させる前に、学習者と共に「読む際の一まとまり」を視覚的に表示する等の指導が必要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な到達目標として、初級と中級学習者の音読音声の特徴を明らかにし、音読のわかりやすさに注目した指導法開発が挙げられる。2022年度に行った研究では、初級学習者と母語話者の音読音声特徴の異同を明らかにすることに成功した。音響分析を利用した音声的特徴の分析、教育の面から音声的特徴について考察し、一定の成果が得られた。この研究成果をまとめ、1本の研究会会誌論文執筆と1本の学会発表を行った。これらのことから、研究が概ね順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、前年度に引き続き中級学習者の音読データを収集する予定である。2023年度の4~5月に調査を行うべく準備が進んでおり、早期にデータの収集を完了させる見込みが立っている。また、漢字圏と非漢字圏出身の初級学習者の音読特徴の異同を検証するため、2023年度の6~7月に音読音声データを追加収集する予定である。収集したデータの音響分析および音声評価を行い、音読指導法を検討する。
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Causes of Carryover |
関連学会や研究会等が引き続きリモートで開催され、予定していた旅費の支出がかなわなかったため、次年度使用額が生じた。2023年度に行う調査の謝金としての使用を予定している。
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