2023 Fiscal Year Annual Research Report
日本語学習者の場所を表す格助詞「で」の習得-韓国語話者とベトナム語話者-
Project/Area Number |
22K13157
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Research Institution | Shiseikan Hall University |
Principal Investigator |
岡田 美穂 至誠館大学, 現代社会学部, 准教授 (30828075)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本語学習者の格助詞の習得 / 場所を表す格助詞デとニ / 韓国語話者 / ベトナム語話者 / 中国語話者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は中国語話者に見られた,(1)「*あの喫茶店にコーヒーを飲む」では「移動先」,(2)「*食堂にうどんを食べた」では「存在場所」という誤用「に」の使い分けと,移動先「に」との混同による(1)の誤用の表出(岡田・林田2016)が,韓国語話者にも共通するものであるかを明らかにすることを研究の目的として行った。 韓国語話者(韓国の学生43人(JFL),日本国内の学生19人(JSL))に協力を得て上記中国語話者と同様の2種類の調査を実施した結果,ベトナム語話者(岡田・林田2024)と同様の結果が得られた。すなわち,回帰分析では(1)の動作場所「で」→「に」は存在場所「に」との間には何ら関係が見られなかったものの,移動先「に」との間にも関係が見られず,JFLのN3・N4レベル16人には(1)の「で」→「に」と存在場所「に」との間に有意な負の関係が見られた。存在場所「に」を用いることで(1)の誤用が減ることを意味する。(1)は「移動先」,(2)は「存在場所」と概ね使い分けられていた。 本研究の成果から次のような「で」の習得過程が推測される。日本語学習者は「に」を初級レベル時に「主体の存在」場所として用い,N4・N3レベル時には「離れた場所の主体の存在」場所にも用いるようになると考えられる。その頃「で」の習得では(1)を「移動先」,(2)を「存在場所」と概ね使い分けるようになっているため,場所への移動が前提となる(1)の「で」と存在場所「に」との間で混乱が生じる。その後N2レベルでは(1)の「で」が,中国語話者には移動先「に」と混同されるが,韓国語話者,ベトナム語話者には混同されない。但し,ベトナム語話者は助詞の正答率が上がれば混同される可能性も否定できない。 (1)の動詞は難易度が低いため難易度の高い動詞を伴う「で」と移動先「に」との間の混同の有無については今後の課題となる。
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