2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13179
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Research Institution | Toho College of Music |
Principal Investigator |
粕谷 麻里乃 東邦音楽大学, 音楽学部, 准教授 (50870721)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 音声知覚 / 音声生成 / ドイツ語 / 第二言語習得 / 習熟度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語を母語とするドイツ語学習者におけるドイツ語のリズム規定に関わる「弱化」の知覚・生成の相違点を分析し、学習者が持つ中間言語の音韻体系とその音声的実現の特徴を提示することである。 研究1年目である令和4年度は、事前の文献調査に基づき、知覚実験の刺激音や知覚・生成実験計画書を作成し、日本語を母語とする習熟度別ドイツ語学習者と統制群であるドイツ語母語話者を対象に、1回目の知覚・生成実験を実施し、データの音響分析並びに統計分析を行った。学習者については、言語能力に変化が生じると対応関係の解釈に問題が予想されるため、同実験協力者から知覚・生成共に同時期のデータ収集を行った。そこでは、実験協力者1名につき約1時間の実験セッション(知覚実験・録音・母語以外の外国語学習歴や外国語音声教育の受講歴等に関するアンケート)を行った。録音データは直ちに音響分析を実施し、各分節素に関わる母音や子音の持続時間、フォルマント周波数等、超分節的特徴に関わるPVI値やVarco値を測定した。両者ともに、ドイツ語を母語とするか否かで大きな有意差は確認した。特に、母音長のPVI値と母音間区間長のPVI値はの差は顕著であった。一方、ドイツ語習熟度別学習者においては、たとえ習熟度が増しても複雑な音節構造に起因するドイツ語本来の時間長の変動は反映し難いことが確認された。知覚実験では、母音の持続時間、インテンシティ、フォルマント周波数の異なるものを提示し、ドイツ語だと認識する境界値を判定した。その結果、母語話者も学習者も、持続時間を知覚の手がかりとしていた点は予想以上に興味深い。フォルマント周波数については、日本語を母語とするドイツ語学習者にとって知覚の手がかりとはし難く、ばらつきも大きかった。外国語学習歴との関係、外国語音声教育の有無の考察等を含め、2年目、3年目も継続して注意深く分析・考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は、新型コロナの影響による渡航制限もあり、本研究に必要十分な実験協力者の確保が難しいことへの懸念もあったが、国内のドイツ語母語話者や日本語を母語とするドイツ語学習者の協力により、計画は概ね遂行することができた。次年度は、同実験協力者に再び知覚・生成実験の協力を仰ぐとともに、研究結果の精度を高くするため実験協力者をさらに増員することを計画している。よって、2年目、3年目と継続してデータの収集と分析を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、当初の予定通り知覚・生成実験を進める。また、令和4年度には実験協力者の収集の都合により、年間を通して知覚・生成実験を実施していた。同実験協力者の1年後の変化を観察するため、令和5年度も年間を通して該当の実験協力者を対象に知覚・生成実験と分析を実施する予定である。令和6年度の最終年度へ向けて、データ分析を進め、終了し次第、統計分析および考察を行い研究成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
感染症拡大の影響を受け、当初予定していた渡航計画に一部変更が生じた。それによりデータ収集の時期に遅れが生じたり、研究計画当初に予定していた国際学会での研究成果の発表にまで至らなった。物品購入、及びデータ分析および研究成果の発表にかかる費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)