2023 Fiscal Year Research-status Report
American Multicultural Conservatism: Minority Conservatives after the 1980s
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22K13191
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
森山 貴仁 南山大学, 外国語学部, 准教授 (10844540)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 政治史 / アメリカ研究 / 保守主義 / 社会運動 / マイノリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、反移民や白人至上主義など白人を主体とする右派ポピュリズムに注目が集っている。それに対して本研究は、アメリカ政治の「多文化保守主義」について考察することを目的とする。アメリカ保守主義は主に白人中産階級やプロテスタントの運動として一般に理解されるが、その一方で女性や黒人、移民社会出身者、同性愛者などマイノリティの中にも保守が存在する。こうした少数派の一部は、なぜ自らが属する集団をしばしば排斥する社会運動に共感するのだろうか。 本研究は、1980年代以降のカリフォルニア州におけるアジア系移民を中心に、人口動態の変化とともに起きた政治的変容の検討を目的として、テクスト分析と資料調査を進める。こうした「多文化保守」の研究は、排他的な保守主義運動がもつ歴史的な包摂性を明らかにするだけでなく、グローバル化の中でアメリカ政治が今後いかに変容しうるのか議論する上で不可欠なテーマとなるだろう。 2023年度には、前年度に引き続き学術研究書や新聞記事を通して二次文献の分析を行うと同時に、アメリカで一次史料の収集も実行することができた。そうした史料収集・分析の一方で、これまでの考察をまとめて論考の出版や学術論文の執筆も進めており、研究のインプットとアウトプットをそれぞれ行うことができた一年と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では2022年度から2023年度まで一次・二次史料の調査と先行研究の整理を実施する予定であったが、前年度と同様、2023年度も学会での研究報告や論考の執筆によって研究内容を形にする機会を持つことができた。 2023年8月3日にアメリカ合衆国カリフォルニア州のロナルド・レーガン大統領図書館が主催した「Age of Reagan Conference」に出席し、そこで研究を報告して質問や意見を交換することができた。報告内容は1970年代の保守主義運動に関する研究で、ケイジャンと呼ばれる白人マイノリティを含む活動家がいかにして新しい形態のメディアを用いて保守主義運動を展開したのかを考察するものだった。 さらに、2016年から進めていたラティーノ保守に関する研究をまとめ、「マイノリティの保守主義――一九七〇年代以降におけるヒスパニック保守」と題する 論考を著した。本論文では、カリフォルニア州のメキシコ系アメリカ人であるリチャード・ロドリゲスという保守知識人を取り上げて、1970年代のラティーノと保守主義との関係を考察している。この論考をふくむ論集は、当初の予定より遅れているが、2024年度中に刊行される予定である。 また、研究の成果を発表するだけでなく、新しい史料の分析も進めることができた。上記のように8月にカリフォルニアで研究報告をした際に、ロナルド・レーガン大統領図書館で一次史料の収集を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の通り、2024年度から2025年度にかけては研究調査へ本格的に比重を移していく。2023年夏に訪れたロナルド・レーガン大統領図書館でさらなる一次資料の収集を行い、またテキサス州にあるジョージ・ブッシュ大統領図書館でも関連する一次資料を集めて、資料分析を進めていきたい。
具体的には、1970年代から2000年代初めのアメリカ南西部におけるアジア系アメリカ人が、どのように共和党や保守主義運動と関係を構築していったのかを理解する必要がある。したがってレーガンやブッシュといった共和党政権の史料をたどり、可能であれば保守の活動家や運動団体の史料も検討していくつもりである。
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Causes of Carryover |
2023年には急激な円安の進行によって、海外で研究活動をするための移動費や宿泊費が大きく上昇した。そのため2023年度には科研費予算の使用を予定よりも控えて、今後の資料収集のための費用にあてたいと考えている。今後も状況が変わらないようであれば、アメリカにおける研究調査の計画を見直し、訪れる文書館・図書館の数をしぼるなど検討したい。
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Research Products
(4 results)