2023 Fiscal Year Research-status Report
The political function of geographical knowledge on Tokyo Geographical Society : Focusing on Takeaki Enomoto
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22K13193
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武藤 三代平 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (50804621)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 東京地学協会 / 帝国大学 地学会 / 王立地理学会 / アカデミズム地理学 / 榎本武揚 / 花房義質 / 桂太郎 / Adolf Erik Nordenskiold |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当該の研究課題に従事して2年目にあたる。昨年度に引き続き、主に研究のベースとなる史資料の収集と調査に従事した。昨年度に東京地学協会(以下では、地学協会と略す)の会員について、明治期から昭和戦前期まで全て把握したが、本年度はこれに加え、会員を個別に履歴や職業等を出来るだけ把握することに努めた。この作業により、同協会の人員構成を詳細に把握することが出来、近代日本の「地理学知」が、政治家・官僚・財界人・実業家・学者・陸海軍の軍人等を横断的に結び付ける紐帯としての機能があったことを確認できた。 また、明治後期より上記の機能が次第に薄れ行き、アカデミズム出身の学者に占領されていく過程が存在することを確認した。この現象を地学協会における政治機能と、地学の専門学者たちによるアカデミズムとの葛藤として捉えることで、時代が下るごとにアカデミズム側が優勢になっていく経緯を解明しつつある。とりわけ、明治中期に帝国大学内に設置されていた地学会に着目し、ここに出入りした学者・研究者たちの史料を調査した。以上の調査と分析を基部として、明治期全般を対象とし、政治とアカデミズムとの葛藤の関係を証明するため、論文作成に従事した。 他方、地学協会内部の構造とは対照的な位置にあるが、「地理学知」をめぐる対外関係・交流に関しても、諸外国のアーカイブを中心に調査を継続した。全体としては、地学協会が19世紀後半における各国・各都市に存在した「地学協会(地理学協会)」の世界的なネットワーク網に参加するための役割を担っており、欧米にみられた科学アカデミー同様の機能を備えていたことを究明しつつある。以上の調査・分析の結果は、順次、論文等で発表していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度まで継続していた別の研究課題をめぐり、昨年はその研究成果をいくつか公表した。そのため、本研究課題に関する論文の公表等が遅れているが、資料収集や調査・分析、データ整理に関して大きな進展があり、次年度以降に研究論文を執筆する基盤となり得る見込みである。研究課題を進捗させる基盤作りに従事したことにより、論文の作成や学会報告の準備が円滑になっている。 本年度は主に国立国会図書館や早稲田大学図書館、外務省外交史料館など首都圏域の図書館や資料館を徹底して調査してきた。前年度に増して、特に個人関係文書内の古書簡類(外務省外交史料館所蔵「花房義質関係文書」等)を丁寧に解読し、地学協会に関係した政治家と帝国大学内の学者・研究者たちの往来を分析することが出来た。地道な方法ではあるが、手作業による文書の調査と解読、そして分析というステップを着実に踏むことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と本年度において、研究を進めるための基部となる史資料の収集と調査を徹底させてきた。次年度においては、未だ不足している傾向にある日本陸海軍と地理学・地学協会との関係資料を調査し、充実させていく予定である。同時に、次年度においては、論文、学会発表等を通じて研究結果の公表に重点を置いていきたい。 以上に加え、海外への資料調査の下準備のため、各国の学会や図書館等の公共施設が提供しているアーカイブ史料の調査・分析を徹底させていきたい。実際に現地調査を敢行する際に、ネット上のアーカイブで観覧可能な史資料を調査してしまうことを回避するためである。このように資料調査や論文の作成に関しても、合理的な活動が求められる。
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Causes of Carryover |
本年度における旅費において、当初の予定より出張期間を一日分減らしたため、次年度使用額が発生した。次年度(本研究課題に取り組んで3年目)以降において、資料調査のために遠方への出張を計画している。その際に、次年度使用額の繰越金を宛がう予定である。
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Research Products
(1 results)