2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13212
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Research Institution | National Institute of Technology (KOSEN), Kure College |
Principal Investigator |
菊池 達也 呉工業高等専門学校, 人文社会系分野, 准教授 (60845709)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 日本古代史 / 隼人 / 律令国家 / 周縁 / 官人 |
Outline of Annual Research Achievements |
律令国家が日本列島周縁領域の支配をいかに拡大したかという点について、従来は、軍事面の解明に重点を置いてきた。また、周縁領域の住民をひとまとまりの集団と見なし、律令政府vs各「異民族」という単純な対立構造で捉えがちであった。その結果周縁領域の住民を、武力によって律令制支配に服した“敗者”として扱ってしまっている。こうした日本古代周縁史研究に見られる中央偏重な歴史認識の克服を目指し、本研究は律令国家が周縁領域の豪族層の協力・理解を得るために採用していた非軍事的アプローチの一端を解明するため、官人として登用された周縁領域の豪族層を取り上げる。そして、彼らのうちどのような人物が任命されたか、いかなる過程でどういった官職に任じられたか、官人としての活動の実態はいかなるものであったかを明らかにする。 研究代表者は昨年度までに、「古代南九州にルーツを持つ中央官人の検証」と「古代南九州の郡司の検証」を実施し、古代南九州の豪族層のうち、中央官人として採用された者、郡司という地方官人に任命された者について考察した。本年度はその成果を論文として発表できた。また、まだ公開はできていないものの、本年度は東北や南九州に存在した、郡司の前身にあたる評司(評造)についても検証を進めた。さらに、総領や大宰、国宰といった7世紀代に存在した地方官と南九州の人々の関係性、時代を遡らせて5~6世紀代に存在した南九州の豪族層と中央の関係性についても検討し、律令国家が日本列島周縁領域に支配を拡大させていく背景について多角的に考察を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は所属が変わり、それにともなって新たな校務や授業の作成などが生じ、所属校での業務量が例年に比べて多かった。また研究代表者は本研究課題以外に、自治体史の編纂事業などにも携わっており、本年度はその成果報告が複数回求められた。そのため、昨年度と比較して本研究課題の遂行に多くの時間を割くことができず、研究の進捗状況が遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本列島周縁領域に隼人・南島人・蝦夷といった「異民族」が住んでいるという認識は、7世紀後半~8世紀にかけて、中央政府の中に存在した。そうした考えが成立したのは、両者の間の交流が疎であったからに他ならない。つまり、周縁領域や「異民族」の成立は、人的・物的な交流関係、そしてそれを結びつけていた交通路といった問題と密接に関わっているといえる。したがって当初の予定をやや変更して、周縁領域における陸上・水上交通にも目配りし、律令国家が日本列島周縁領域の支配をいかに拡大したかという点について考察を進めたい。
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Causes of Carryover |
本年度から所属が変わったことにともない、所属校で新任教員準備経費がつき、例年より多めに予算配分を受けた。この予算は1年間で使用する必要があったため、優先的に使用した。また、昨年度からの繰越金もあった。そのため次年度使用額が生じることになった。なお、これまでに使用した本研究費の内訳は、申請当初の計画と比べると旅費の使用金額が少ない。そのため、次年度に繰り越された費用は旅費を多めに使用したい。
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