2022 Fiscal Year Research-status Report
百済における将軍号受容と官位制―古代東アジア世界の史的動向解明のための基礎的研究
Project/Area Number |
22K13223
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
井上 直樹 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80381929)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 百済 / 中国将軍号 / 官位制 / 古代東アジア世界 / 冊封関係 / 『武寧王墓誌』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、6世紀の百済における中国将軍号の受容とその意義ならびに官位制による百済独自の支配体制構築過程の検討を通して、百済の史的展開過程だけでなく、百済の事例を通して、その背後にある中国皇帝を頂点とした古代東アジア世界の史的動向の一端の解明を目的とするものである。具体的には百済において、中国王朝との冊封関係を前提として受容された中国将軍号にもとづいた5世紀代の支配体制が、そのくびきを脱して、6世紀後半までにいかに独自の官位制にもとづく支配体制を構築したのかということを解明し、中国皇帝を頂点とした古代東アジア世界の構造とその変容の一側面を明らかにする。 本年度は、当初、『武寧王墓誌』や韓国・中央博物館所蔵の高敞の百済墓から出土した「□義将軍之印」という6世紀百済の金石資料にみえる「将軍」から、6世紀前半の百済における将軍号受容の実態について研究を進め、中国王朝の政治的影響力を検討する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をふまえて、韓国での調査を延期し、『武寧王墓誌』からうかがえる百済における中国将軍号認識について検討を加えた。その成果をふまえて、中国王朝の将軍号に規制された百済の支配体制が、どのような過程を経て、百済王を頂点とする16等からなる官位制へと移行したのかを解明し、古代東アジア世界における百済独自の官位制の成立の意義を追究し、学会でその研究成果を報告し、それをふまえて論文を作成し、学会誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の核である中国王朝の将軍号に規制された百済の支配体制が、どのような過程を経て、百済王を頂点とする16等からなる官位制へと移行したのか、ということについては着実に進展している。当初予定していた、韓国国立中央博物館所蔵の6世紀の百済墳墓から出土した「□義将軍之印」と刻まれた銅印の調査については、新型コロナウイルス感染症の世界的感染をふまえて延期せざるを得ず、6世紀前半の百済における中国将軍号受容の実態の解明については次年度以後の課題とせざるをえなかったが、『武寧王墓誌』の検討などから、古代東アジア世界における中国皇帝を頂点とした政治的関係およびその影響などについては、研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の世界的感染の沈静化にともない、今後は当初、初年度の研究課題であった韓国国立中央博物館所蔵の6世紀の百済墳墓から出土した「□義将軍之印」と刻まれた銅印の調査に着手し、それをふまえて6世紀前半の百済における中国将軍号の政治的意義について検討を加え、講究し、百済の史的展開過程および当初の課題であった中国皇帝を頂点とした古代東アジア世界の構造とその変容の一端を解明し、学会で報告し、論文を作成する。
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Causes of Carryover |
本来、本年度実施予定であった、韓国国立中央博物館所蔵の6世紀の百済墳墓から出土した「□義将軍之印」と刻まれた銅印の調査を新型コロナウイルス感染症の世界的感染をふまえて延期せざるを得なかったためである。ただし、この韓国国立中央博物館所蔵の6世紀の百済墳墓から出土した「□義将軍之印」の調査は、研究2年目の2023年度に実施する予定である。
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