2023 Fiscal Year Research-status Report
How does alpine vegetation control water discharge in alpine zones?
Project/Area Number |
22K13246
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
榊原 厚一 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (40821799)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水貯留 / 水涵養 / 土壌の発達 / ラドン / シリカ / 水の同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高山植生が水貯留・水流出をどのように制御しているかを明らかにすることを目的として実施している.令和5年度は,令和4年度に引き続き,5分間隔の水文観測を実施し,水試料の放射性ラドン,水の同位体比,水質トレーサー値を分析・解析することで進めた.試料の採取には,自動採水器による高頻度採水,季節変化をとらえる定期採水の両者を実施することができた. 令和5年度の水文観測結果において,令和4年度と同様な現象が捉えられた:①裸地流域における降雨に伴う一時的な渓流の形成,②植生流域における水涸れしない継続的な水流出.このことは,令和4年の一時的な現象ではなく,高山域の一般的な現象であることを示しているものと考えられる.そこで,令和5年度では,植生流域において,裸地流域と異なる地下水涵養過程があるものと仮定を置き,その過程を明らかにすることを主目的とした. 植生部湧水の総溶存イオン量と放射性ラドン濃度は,裸地部湧水と比較して大きい値を示した.水の滞留時間の指標となる溶存シリカ濃度を分析すると,植生部湧水の方が高い値(5倍高い)を示したことから,植生部湧水では滞留時間の長い水が貯留されていると判断できた.さらに,植生部湧水の流量と,各種トレーサー値は逆相関していることから,降水のインプットによって水涵養過程が変動すると考えられた.一方,逆相関の程度は,裸地部流域と比較し,植生部流域の方が小さかったため,水貯留量は植生部で大きいものと考えられた.さらに,水の酸素・水素安定同位体比から,蒸発の影響の有無を検討したところ,植生部の方が水の蒸発線に近い同位体組成を有していた.以上の結果より,裸地部では,粗粒堆積構造により降雨の浸透が早く岩盤の上を迅速に流出しており,植生部では,土壌の発達により降雨の浸透が遅く,岩盤層への涵養を促進するため,裸地部より高い水貯留機能を有していると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度に本研究テーマを遂行するための試験地を構築し,その試験地において概ね予定していた調査・解析が実施できた.特に,自動採水器の設置許可の取得と,実際の運用が実施できたことから,解像度の高いデータが取得できた.令和5年度では,本研究の核心に近い,高山帯の裸地部と植生部の地下水涵養過程の解明に向けたデータの取得と解析が完了できた.しかしながら,当初予定していた大規模降雨時の流出応答については,気象条件が満たされず,調査を断念せざるを得なかった.一部,予定していたことができなかったことから,「おおむね順調に進展している」であると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度も本研究で構築した試験流域において継続的に降水・渓流水・湧水・土壌水の観測と採水・分析を実施する.また,当初提示していた「植生流域のどの部分のどのような性質によって水貯留機能が発揮されるか」の課題解決に向けた調査を令和5年度に開始することができた.しかしながら,対象は土壌であり,採取・分析・解析に時間がかかってしまっている現状がある.そのため,現状では,令和5年の成果として解析結果が提示できていない.したがって,令和6年度では,採取した植生部土壌層の水文物理・化学特性の分析と解析を継続する.現在,土壌試料の透水性・水分特性について概ね分析が完了できているため,令和6年度では完了することが十分可能である. 令和4年度,令和5年度で得られた知見を合わせることで,高山植生部の水涵養・流出における物理化学的特性の概念モデルを作成し,水流出と水涵養の諸過程を明らかにする.
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Causes of Carryover |
令和5年度に受理する可能性のあった論文の英文校閲費とオープンアクセスのための費用を計上していたため.これらは,令和6年度に支出予定である.
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