2022 Fiscal Year Research-status Report
「音楽する都市」における音楽の実践と資源化に関する地理学的研究
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22K13253
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
坂本 優紀 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (40865226)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 音楽 / ミュージッキング / 楽器製造産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は長野県松本市,東京都八王子市,富山県南砺市を対象に,音楽に関する実践の事例を現地調査した。松本市は楽都をキャッチフレーズに地域づくりを推進しており,国際的音楽イベントのセイジ・オザワ・松本フェスティバルをはじめ,音楽に関する事物が展開されている。本年度は,まずセイジ・オザワ・松本フェスティバルに関する取組みを調査した。その結果,イベント自体は夏季の約一カ月間の開催であるが,市内にはイベントに関連する景観が年間を通して展開されており,地域資源として音楽が重要な意義を持つことを明らかにした。また,松本市はエレキギターの製造が全国で最も盛んであることから,楽器製造と地域の関係を調査した。その結果,近年は楽器製造企業の集積地であるという特徴に関連した取組みがみられ,地域資源として活用され始めている様子が確認できた。本成果は地域研究年報45にて公表した。 八王子市では市内の公立小・中学校の校歌を対象に,校歌に表現される地域をテキストマイニングの手法を用いて明らかにした。これまで校歌と地域の関係は,学校の立地する場所との関係で検討されてきたが,本研究では場所に加え,校歌が作成された時代が地域に関する表現の有無に影響していることが示唆された。本成果は地理空間15巻2号にて発表した。 南砺市の事例では,ワールドミュージックが地域の音楽へと受容される過程を調査した。南砺市ではワールドミュージックの音楽イベントが1991年から開催されており,回数を重ねる中で地域住民による音楽実践も始まった。現在のイベントには多数の住民が参加しており,地域にとって重要なイベントとなっていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究は,おおむね順調に進展した。2022年5月から継続的に現地調査を進め,複数のインフォーマントから聞取りすることができた。一方,近年はCOVID-19の流行により音楽イベントの開催中止,あるいは規模縮小となっていたため,流行以前とは異なった様相となっていた。そのため,現地のイベント調査が不十分な内容であったと考えられる。2023年度はCOVIID-19にかかる規制も緩和され,イベントも以前と同様の規模・内容に少しづつ戻ると予想されることから,現地調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降も当初の計画通り研究を推進していく予定である。今後は海外フィールドとしてメキシコ合衆国での事例も調査する予定である。国内外の事例を蓄積し,文化状況の異なる地域の比較を通して,音楽と地域の関係を明らかにしていきたい。また,今後はCOVID-19に関するイベントの規制の緩和が予想されることから,松本市をはじめとした国内での調査も積極的に実施していきたい。調査で得られた成果を整理し,国内外の学会で発表するとともに,学術誌での公表を目指す。
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Causes of Carryover |
基金であることから柔軟に研究費を運用するために,次年度との使用額に連続性を持たせたため一部持ち越しをした。残額については論文投稿にかかる費用に充当する計画である。
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