2023 Fiscal Year Research-status Report
Citizen's Movements and its Conditions for Food Security: Basic Research for the Construction of Urban Food Policy-.
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22K13258
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
小林 基 摂南大学, 国際学部, 講師 (10845241)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フードポリシー / 農家 / 市民活動 / ケア / 農業の多面的機能論 |
Outline of Annual Research Achievements |
関西圏における農業および農産物流通、子ども食堂等、「フードポリシー」にかかわるボトムアップの市民活動および社会関係の展開についてフィールドワークを通じて追求した。とくに農業および農産物流通を支える市民活動の展開については、富田林市・枚方市・京田辺市・交野市などを事例に、コアとなる農業者等を起点とする活動展開について整理し、その成果をインバネス(イギリス)で開催されたThe 17th MARG (Marginal Areas Research Group) workshopおよび日本有機農業学会にて報告した。 農業者を起点とする市民活動については、府内における有力な農家が大阪府農業会議などを軸として長年の活動の中で培ってきたネットワークとノウハウの蓄積が重要な役割を果たしている。2023年現在で40~70歳代の各世代の農家らが、ニュータウンなどの周辺住民等と協働しながら、マルシェや朝市の開催、体験農園、農業塾、地域振興や地域防災などにも取り組んでいる。また、農協が体験農園事業に進出する事例も登場している。ここでは「農」を担う人々が自領域の存続を図るために多様な社会領域へと進出し、その意義を社会に示そうと奮闘する姿が見えてくる。一方、これは「食」が多様な社会領域を横断する問題関心として焦点化されているヨーロッパの諸都市の状況とは明白に異なっている。 他方、京田辺市のまちづくりセンターなどを拠点に活動する子育て世代の女性たちのグループが地元の農家と協力関係を結び、学校給食への有機農産物導入を支える取り組みを展開している。「ケア」の視点からの関心が、女性たちを中心とした、農と食の領域における市民的ムーブメントを引き起こし牽引している状況に深く触れることとなり、今後これについて考察を深める必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関西都市圏における農業および農産物流通、子ども食堂等、「フードポリシー」にかかわるボトムアップの市民活動および社会関係の展開について、フィールドワークを通じてより深く追求することができた。さらに、その成果を複数の学会発表、および論文で報告することができた。そうしたなかで新たな発見にも触れ、本課題を構想した当初よりも焦点化すべきポイントが明確化してきている。とくに、農業分野のほか、ケアや園芸といった市民活動領域からの政策展開の可能性について検討を深めていくことが、ブレークスルーを導きうる可能性が見えてきた。これらの領域では市民活動が長年つづけられ、ネットワークとノウハウの蓄積が豊かである。農業者におけるネットワーク構築の状況とあわせて、これらの市民活動展開の経緯・基盤について調査を深めることで、都市圏の文脈に応じたフードポリシーの提言が可能になるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本課題の最終年度として、調査および分析を継続実施したうえで、研究成果の整理と報告を実施していく予定である。 まず、調査については、すでに訪問している都市圏(富田林・京田辺・神戸・枚方)の各活動主体への追加的なインタビューを行い、その活動展開の過程・経緯・条件について詳細な情報収集を実施する。その際、とくに重要であることが判明しつつもやや調査が手薄になりがちであったケア・子育て、園芸に携わる市民活動主体が、なぜ・いかにして農と食にまつわる取り組みへと活動を広げていったのかについて、関係者の考え方とその変容、およびネットワーク形成に着目して調査を深めていきたい。また、あらたに必要な統計データと行政資料についても適宜収集・追加しながら研究を進めていく。 年度の半ばから後半にかけて、論文執筆と学会報告によって本研究成果の公開に努めていく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19パンデミックによって生じた研究計画の遅れのため、他の科研費研究課題を延長することになった。このため、遅れの生じた研究課題と本課題とを並行して実施することとなり、結果として本研究課題で実施予定だった調査のための出張をキャンセルした。したがって次年度使用額については、当該出張のための旅費として使用する予定である。
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