2022 Fiscal Year Research-status Report
Ecological Anthropology for the Recomposition of Amazonian Umwelt: A Study for Ayahuasca Religions
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22K13261
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
後藤 健志 信州大学, 全学教育機構, 非常勤講師 (70825504)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アマゾニア / アヤワスカ / 環世界 / アグロフォレストリー / 生態人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ブラジルに発祥し世界規模に拡大したアヤワスカ宗教に注目し、その動態を植民者たちの側がアマゾニアの歴史生態学的景観に包摂される過程として捉えることを試みる。本研究では、この事象に環世界の観点から接近し、精神展開性の薬草茶アヤワスカを介して人間の内界で経験される知覚の再構成とアヤワスカの獲得に向けてアグロフォレストリーの形で営まれる外界に向けた作用の再構成との相関性について考察にする。 2022年度はアヤワスカ宗教の発祥地であるブラジル・アクレ州一帯を訪問し、サント・ダイミ系の2つの共同体で実地調査を行った。調査を通じて、(1)アヤワスカを得るために営まれるアグロフォレストリーに見られる植生遷移の過程を把握することができた。また(2)アヤワスカの2つの原料植物が、多様な食用・薬用植物との複合のなかで同地域での生活に不可欠な栄養源の一部として栽培されているという認識を得るに至った。 また、調査者自身は調査期間中、細菌性の感染症に罹る経験をした。アヤワスカ宗教が関心を向ける事柄の1つに「治癒」が挙げられる。高温多湿の熱帯林での生活は、生態系との相互作用からもたらされる様々な感染症と隣り合わせであり、これは同宗教で治癒を目的とする儀礼の体系化が進んだ背景でもある。この観点から、アヤワスカの実践における適応や治癒といった観念について多角的に捉える視点が得られた。 2022年度は、国内研究会で研究発表を行った。またブラジル訪問中には本研究に関わる書籍出版の公開前シンポジウムで講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、実地調査を行うことができたので、良いスタートを切ることができたと言いえる。一方、調査の実施時期が年度末にずれ込んだため、本年度内に調査データの分析、およびに先行研究との関連付けといった作業にまで手を回すことができなかった。その点で「やや遅れている」という自己評価を下さざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、これまでに得られた調査データを分析し、先行研究と関連付ける作業を進めていく。そして、その成果を次年度以降に著作として発表できるよう、学会発表を進めていく。また、昨年度同様、年度末にブラジルでの実地調査を行う予定である。 当初の計画では「アヤワスカ宗教」という広い括りで対象集団を把握していたが、実際に調査を進めていくに従い、サント・ダイミ系だけでも多様な宗派が存在しており、すべてを把握することは助成期間の年限では困難であると認識するに至った。対処策としては問題設定をよりピンポイント化、対象集団を限定していくことが必要である。 また、アヤワスカ宗教をめぐりブラジル国内で起こっている諸事象は、欧州や北米など西半球全体との関連性が深く、ブラジル国外の動向をどのように捉えていくべきかをという課題に直面している。具体的には、欧州や北米におけるアヤワスカ需要の拡大は、ブラジルでの新たな土地利用や経済関係の様態を生み出しているといった点が挙げられる。対処策としては、ブラジル国外を範疇に入れた多所的な調査を短期間であれ盛り込むか、あるいは文献を通じてその動向を探っていくことなどが考えられる。
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Causes of Carryover |
2022年度の実地調査が年度末にずれ込んだことにより、データ分析に必要な文献の収集作業にも遅れが生じた。それにより、同経費が盛り込まれた物品費の支出が当初の予定額を下回る形となった。当該助成金は、本年度に文献収集費、学会参加費、調査費などの使途で使用する計画である。
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