2023 Fiscal Year Research-status Report
COVID-19の後遺症の人類学:生物医療・漢方鍼灸・アーユルヴェーダを事例に
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22K13262
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
梅村 絢美 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (80870261)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | long covid / コロナ後遺症 / 漢方 / アーユルヴェーダ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、日本国内の漢方薬局における聞き取り調査およびスリランカに関する文献調査を中心に実施した。 [日本]①東京都内で漢方相談・漢方薬処方を行う漢方薬局において、漢方における「COVID-19の後遺症」の捉え方とその対処法、過去2年間の顧客の動向について聞き取り調査を実施した。②長崎市内で漢方相談・漢方薬処方を行う漢方薬局において、長崎市内における漢方薬局の位置付けやその他の医療との関係について話を聞いた上で、「COVID-19の後遺症」に関連する患者の相談内容や処方内容について聞き取り調査を実施した。[スリランカ]①政府レベルでの「COVID-19の後遺症」の位置付けについて、主に生物医療に関連する文献調査を実施した。②アーユルヴェーダにおけるCOVID-19の捉え方と、使用する薬草、従来の疾患との差別化等に関する文献調査を実施した。上記現地調査および文献調査を踏まえ、本年度は、日本の漢方医学およびスリランカのアーユルヴェーダにおける「COVID-19の後遺症」に対する考え方、病理、対処法について、主に医療者側の説明に基づき明らかにすることができた。さらに、文献調査を踏まえ、「COVID-19の後遺症」の位置付けや診断基準が、生物医療において日本とスリランカにおける差異が少ないのとは対照的に、日本の漢方とスリランカのアーユルヴェーダでは、代表的な症状や病理、対処法が大きく異なることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、以下の項目について実施予定であった。 方法:日本国内およびスリランカにおける現地調査と医療スタッフを対象としたオンラインインタビュー・「COVID-19の後遺症」ケアの観察、文献研究 調査項目:日本・インド・スリランカにおけるCOVID-19感染拡大の経過。日本(生物医療・漢方鍼灸)とインド・スリランカ(生物医療・アーユルヴェーダ)の各文脈において「COVID-19の後遺症」が、どのような具体的症状として認知され/されていないか診療を参与観察しながら検討。「COVID-19の後遺症」の背景の説明および具体的な治療手順の検討。「COVID-19の後遺症」患者の後遺症の経験(ナラティブの収集) このうち、日本・インド・スリランカにおける、文献レベルでの「COVID-19の後遺症」の輪郭について、概要を把握することができたため、本年度の研究は、「概ね順調に進呈している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度まで把握してきた、COVID-19の後遺症に関する概要を踏まえ、次年度以降は医療者のみならず、患者側からみたCOVID-19の後遺症の経験について、インタビュー等を実施しながら詳細を調査していく。 具体的には、以下の項目を予定している。 ・インド・スリランカのアーユルヴェーダ治療院・保養施設・調剤薬局の現地調査 ・上記施設の医療スタッフ、患者に対する半構造化インタビュー ・日本の漢方薬局を利用する患者に対する半構造化インタビュー
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Causes of Carryover |
本年度は、当初予定していたスリランカ調査が実施できず、旅費として拠出する予算を次年度に繰り越さざるを得なくなってしまった。次年度以降、南インドおよびスリランカにおいて、現地調査を実施する予定である。また、本研究成果を海外の学会において口頭発表する際の旅費として拠出したり、査読つき学術誌において発表する際のオープンアクセス化にかかる費用として拠出する予定である。
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