2022 Fiscal Year Research-status Report
米墨国境地域の先住民族のモビリティと記憶―アイデンティティ形成と関連して
Project/Area Number |
22K13270
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
福間 真央 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (60907583)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国境 / 移動 / アイデンティティ / 記憶 / 儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアメリカとメキシコの国境を跨いで居住する先住民族が行う、人と人、コミュニティとコミュニティを結びつける「モビリティ」、および情緒的なつながりを生み出し、継続性や類似性を強調する「記憶」に関わる政治的・文化的実践を、アイデンティティの形成プロセスと関連させながら民族誌的アプローチから調査・考察するものである。 2022年度は当初の予定通り、2回の短期フィールド調査を行った。具体的には、マルチサイト調査法を用いて、米墨国境地域の先住民族コミュニティ間を移動しつつ、インタビューと参与観察を行った。ポストコロナ禍とあって、米墨国境地域の治安が悪化していること、陸路の越境に時間を有したこと、また、米国の急激なインフレーションによって予算以上の出費を強いられていることもあり、想像していた以上にフィールド調査が難しくなっている。このような状況ではあったが、メキシコおよびアメリカで重要なインタビューをいくつか行うことができたため、今のところ調査は概ね順調に進んでいるといえるだろう。また、フィールドのデータは不足しているが、文献はある程度集まってきた。今年度もフィールド調査を2度行い、主にインタビューを通じてデータ収集を行う予定である。 また、博士論文の内容をもとにした単著の論文が『国立民族学博物館研究報告47巻4号』に掲載され、分担執筆した図書(Espacios fronterizos y diversidad territorial en conflicto)がメキシコで発刊されるなど、研究成果の公開も着実に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初めてのフィールド地であったが、予想していたよりもうまく進めることができたため。とはいえ、データはまだ足りていないので、今年度はさらに精力的に活動していくつもりである。 また、今年度は論文2本を公開することができた。その点では、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も予定通り、国境地域の先住民のモビリティと記憶を考察するためのデータをフィールドワークにより得ていく。夏にはカリフォルニアとバハ・カリフォルニアで、冬にはアリゾナとソノラでフィールド調査を行う予定である。今年度のフィールド調査である程度のデータを集めることができれば、2024年度にどこかの学会(日本文化人類学会かラテンアメリカ学会)で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
アメリカのインフレと円安、およびコロナの影響により、アメリカでのフィールド調査が難しかったことが要因の一つとして挙げられる。その結果、比較的安価で滞在できるメキシコでの調査を優先することとなった。今年度はコロナの影響はほどんどないようなので、予算を考慮しつつ、アメリカでの調査も進めていきたい。
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