2022 Fiscal Year Research-status Report
Regulations regarding Assisted Reproductive Technology
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22K13276
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
山口 真由 信州大学, 先鋭領域融合研究群社会基盤研究所, 特任教授 (50879806)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 親子法 / 家族法 / 生殖補助医療 / アメリカ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、法的規律と専門家を対象としたガイドラインの組み合わせによって、医療の自由を維持しながら、生まれてくる子どもの利益を損なわない、生殖補助医療における実効的な行為規制の検討にある。 そのために本研究はアメリカの実情を対象とする。レッセ・フェールと批判されるアメリカの生殖補助医療規制においてどのような規律が試みられ、それらがなぜ機能しないとされるのかを明らかにすることで、逆説的に乗り越えるべき課題を顕在化させて、わが国における実効的な規律のあり方に関する具体的な示唆を得られると考えるからである。 生殖補助医療に関する規制は代理懐胎と第三者による精子・卵子・胚の提供とあっせんに関するものに大きく分けられる。第一に、代理懐胎に関しては、アメリカにおいても①代理懐胎者の権利保護、②子どもの利益保護及び③両者を達成するための司法審査という3つの柱に従って規制が試みられてきたが、養子縁組の規律を参照した②子どもの利益保護については、その使い勝手の悪さから敬遠され、現状においてはほとんど規律のない状態であると明らかになった。 第二に、精子・卵子・胚の提供とあっせんに関しては、子どもの出自を知る権利が大きな問題となっている。子どもの出自を知る権利については精子や卵子提供者のプライバシー権とトレードオフの関係にある。この点、精子提供者を学生とより年長者のグループに大別した場合、匿名の提供を禁ずる法律は、既に定まったパートナーとの間での熟慮の上で提供を決定した年長者グループとの比較で、匿名をより強く望む学生グループを大きく減少させると示唆されているが、これは精子バンクにとっては痛手であるため、そのロビイングによりアメリカにおける出自を知る権利の保証はなかなか進まない実情が明らかになった。 これらの課題に応える実効的な規律の可能性の検討を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては第一段階としてアメリカにおける生殖補助医療の規制の実態を明らかにし、第二段階としてそこから抽出された具体的な課題を我が国における規制のあり方への示唆とすることを目的としている。 第一段階であるアメリカの規制の実態について、代理懐胎と精子・卵子・胚の提供とあっせんそれぞれについておおむね調査のめどがついているため、順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
生殖補助医療の行為規制のうち、代理懐胎についてはアメリカのモデル法の制定に関して各州の法制について綿密な調査がなされている。モデル法の立法過程の資料を検証することで、各州における行為規制の実態と課題を理解することができると考える。 精子・卵子・胚の提供とあっせんについては、判例や各州の法制をデータベース等で調査するとともに、最新の論文や精子バンクへの調査を通じて実務慣行を理解したい。
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Causes of Carryover |
本研究においては、実務慣行を理解するためアメリカへの渡航等を企図していたが、新型コロナウィルスの影響による渡航制限に加えて、オンラインでもアメリカのプラクティスを知るための資料が整備されつつあるため、必ずしも渡航が不要となり、次年度使用額が生じている。 次年度においては、アメリカへの渡航か、それと同等の調査が日本にいながらできるようであれば、文献データベースやオンライン機器の購入に当該差額を補充したい。
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