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2023 Fiscal Year Research-status Report

自律を基底に据えた障害者に対する生存権保障の法理論と実践に関する比較法的研究

Research Project

Project/Area Number 22K13283
Research InstitutionTeikyo University

Principal Investigator

杉山 有沙  帝京大学, 法学部, 講師 (00705642)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2027-03-31
Keywords個人の自律 / 憲法 / 障害法 / 生存権 / 憲法13条 / 自己決定権
Outline of Annual Research Achievements

本研究課題は、個人の自律を基底に据えた生存権保障が、具体的にどのような規範を導き出すのか、について憲法論として研究するものである。これを検討するために、本研究課題では、①社会的弱者の「自律」に関する法的定義とその意味、②その「自律」を保障(または支援)する生存権保障の具体的な制度設計、そして③「自律」を組み込んだ生存権をめぐる司法審査のあり方、という3つの観点から研究する。
当該年度は、特に障害者とヤングケアラーに注目して、①から③の論点を満遍なく研究した。具体的な成果として、学術論文として「ヤングケアラーと自律形成の保障」『帝京法学』37巻1号107-125頁(2023年10月)(研究成果①)と、単著として『障害者の自律/自立と憲法-「自立生活」論から「自律の保障」を問いなおす』総320頁(弘文堂、2024年2月)(研究成果②)がある。
研究成果①は、憲法が重視する「自律」の形成の場面における社会的障壁について、ヤングケアラーを素材に検討した。ここでいう社会的障壁とは、成人でも耐え難いと感じる可能性があるケア負担を子どもが担うことで、当人の自律の形成に負荷がかかるというものである。そして、その結果、現在から将来にわたって、当人の自律に影響を及ぼすことを指摘した。
研究成果②は、障害者の自律を保障する生存権保障に関係する論文を中心に、具体的な制度設計のあり方に関する新規原稿をあわせてまとめたものである。具体的には、本書は4部で構成される。第1部では障害者の「自律」を支える理論、第2部では「自己決定能力」の有無をめぐる司法の判断基準、第3部では「自己決定能力」の有無をめぐる司法の判断基準、そして、第4部では障害者と「自律的な生」の保障について検討した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

本研究課題のおかげで、「障害者」の自律を基底にした生存権保障に関する理論的可能性に関する単著をまとめることができた。もちろん、この際に、障害者にとどまらず、社会的弱者一般の権利保障についても念頭に入れながら検討してきたが、障害者ではなく、「個人」の自律を規定にした生存権保障のあり方を考察するには、これまでの研究成果の一般化をしないといけない。この気づきは、本研究課題による支援を受けて研究成果を積み重ねてきた結果、得ることができたことは言うまでもない。しかし、そうだとしても、これまでの研究成果を一般化する作業は、一長一短では終わらないことが予測できる。
さらに、改めて、生存権論を研究し直したところ、これまでの研究成果を活かすためには、アプローチ方法の再考が必要であることにも気づいた。と言うのは、憲法学における生存権論の蓄積は重厚である。そのため、問題となりうる、いくつかの論点が確立しており、慎重に研究を進めなければ、意図しない方向に研究が進む危険性がある。
いずれの問題も、研究を進めてきたからこそ、顕在化したものだと言えるが、課題が多いことは自覚しないとならない。

Strategy for Future Research Activity

前述の通り、本研究課題には、2つの大きな問題を抱えている。そこで、今後は、特に、これまでの研究成果を一般化(すなわち、「障害者」の自律を基底にした生存権論の研究成果を、生存権対象者全ての問題として論じることができるように一般化する)に力を入れて研究を行う予定である。より具体的に言えば、生存権論の中心的な問題と位置付けられる、生活困窮者の生存権保障について、自律の保障の観点から検討を行う。そして、ここを起点にして、高齢者や子どもといった生存権対象者の問題に応用していきたい。
また、もう一つの問題である、生存権論へのアプローチ方法については、現時点で対策が思い浮かばないので、先の論点を検討しきながら、慎重に検討していく予定である。

Causes of Carryover

当該年度は、タブレット機器などが相次いで壊れ、研究継続のために、途中で申請をして、使用可能額を増やした。しかし、これは、次年度と再来年度の前倒しに他ならない。そこで、次年度で、少しでも予定通りの予算を確保したいと思い、当該年度の使用額を節約するように努めた。
この結果、次年度使用額が生じた。

  • Research Products

    (2 results)

All 2024 2023

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] ヤングケアラーと自律形成の保障2023

    • Author(s)
      杉山有沙
    • Journal Title

      帝京法学

      Volume: 37(1) Pages: 107-125

    • Open Access
  • [Book] 障害者の自律/自立と憲法-「自立生活」論から「自律の保障」を問いなおす2024

    • Author(s)
      杉山有沙
    • Total Pages
      320
    • Publisher
      弘文堂

URL: 

Published: 2024-12-25  

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