2023 Fiscal Year Research-status Report
地域共同体法の直接適用性と国内法上の地位に関する「裁判官対話」の比較研究
Project/Area Number |
22K13289
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
中井 愛子 大阪公立大学, 大学院法学研究科, 教授 (00815722)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中南米 / カリブ / 裁判官対話・裁判所間の対話 / EU / 地域的共同体法 / 国際法の国内適用 / 地域統合と法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目であった前年度には、アンデス共同体、南米共同市場を主な対象に、地域統合機構の制度設計、共同体裁判所(紛争解決機関)規程、国際・国内の主要判例に関する調査を行い、日本語で研究成果の一部を共著書として発表したほか、ペルーで開催された国際学会で英語での口頭発表を行った。 2年目であった今年度は、当初の実施計画どおり、カリブ地域を中心に研究を進めた。カリブ地域は、ほとんどがコモン・ロー諸国であることに起因して、同じコモン・ローを適用する裁判所として地域的国際裁判所が国内裁判所の上級審を兼ねるという際立った特殊性を有しており、そこにおける裁判所間の判決の相互参照は、他の地域と比べてより直接的に地域的な法のダイナミズムに関わっているといえる。ただし、これまで研究対象としてきたところの欧州、中米、南米各地域は大陸法系の諸国がほとんど占めており、地域的国際裁判所の制度設計も大陸法を基礎としているため、カリブ地域とこれらの地域との比較には慎重を要する。したがって、カリブ地域を対象とした研究成果の取りまとめには一定の時間をかけるのがふさわしいと見込まれる。 並行して、アフリカを含む多様な地域の地域統合の概要の調査、国内法体制が多様であるアジア諸国における国際法の国内適用に関する調査を行ったほか、昨年度から続いているブラジルの研究者との比較法的観点からの共同研究を継続した。 以上を踏まえ、今年度の研究成果の発表としては、国内裁判所の役割を国際法の側がどのように位置づけてきたのかを多国間条約等に依拠して整理した、総論的・理論的内容の口頭発表を、国際法と比較法を対象とする台北での国際会議で行った。論文の刊行は2024年度に予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね実施計画どおりに研究を遂行することが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画に沿って遂行していく。
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Causes of Carryover |
理由として以下が挙げられる。1.今年度の調査対象が英語を使用するカリブ地域であり、文献の収集に関して他の言語ほどの費用が掛からなかった。図書館からの貸し出しや閲覧で賄える資料も多かった。2.他の用務で長期間欧州(スイス)および米国に滞在することになり、併せて本研究課題の資料収集も行えたほか、本研究課題のためのハーグ出張もスイスから出発・帰着したため、本科研費から支出する費用が抑えられた。3.インタビューの謝金を辞退された。 今後の使用計画としては、来年度は研究成果の取りまとめと成果発表に注力するが、追加的な在外調査が必要となりうるため、本科研費を適切に充当して研究を遂行する。
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