2022 Fiscal Year Research-status Report
国際法における国家の成員資格―ハーグ国籍法抵触条約(1930年)以前の理論と実行
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22K13290
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
加藤 雄大 東北医科薬科大学, 教養教育センター, 講師 (70802221)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 国籍 / 無国籍 / 国籍剥奪 / 市民権 / 成員資格 / 属人法 / 地位 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国家の成員資格をめぐる今日の法規範の基本的構成を形成したハーグ国籍法抵触条約(1930年)1条について、戦間期以前の理論と実行を遡行して実証的に問い、それにより国際法が国家の成員資格を規律するとすれば、それはいかなる実質的論拠と具体的態様によるものでありうるか、堅固な認識の範型を得ることにある。 本研究実施初年度である本年は、実施計画に予定していた段階のうち、とくに戦間期の国家の成員資格に関する国際法理論の一つ(とくにJosef L. Kunzによるもの)を、それらの対抗関係(i)と参照関係(ii)、同時代の国家実行との対応関係(iii)に着目して分析した。Kunzは、端的にいえば、「いかなる国も自国と合理的に(rational)結びついていない個人に国籍を与えてはならない」という法規範の存在を主張した。この主張は、(近年、Kaarlo Tuoriが法に伏在する基本的要素として用いる)ratio/voluntasの二分法によるとすれば、前者(ratio)を基調とするものであり、各国の意思による規律という上記条約の基調とは矛盾するものである。にもかかわらず、なぜ、どのようにKunzはこの主張を展開したのか、その文献を基に検討した。同時に、ひるがえって上記条約は、なぜ、どのように後者(voluntas)を基調とするに至ったのか、その起草会議の記録等を踏まえて検討する作業も行った。 以上の本年度の研究により、国際法による国籍の規律について、当時の各国の立場は決して一様であったわけではなく、鋭い対立を引き起こした一つの論点であったこと、そしてそのために、この論点の周りに展開された論拠と態様の一端がなお不十分ながら明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の感染拡大による影響がつづき、行動(とくに移動)の制限はあったものの、それは研究計画の時期から想定していた事態であったため、大きな影響を被ることなく研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までCOVID-19の感染拡大による影響がつづき、行動(とくに移動)の制限はあったのに対し、今年度はその影響が大きく低減すると見込まれることから、前年度までの研究から生じた新たな資料収集の必要性を満たすため、欧州のいくつかの国を訪れて資料収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品費については、研究に必要な文献の購入が予定よりも少額となったためである。旅費については、COVID-19の感染拡大の状況が予定よりも長く同年度末まで継続したためである。
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