2023 Fiscal Year Research-status Report
贈与と寄付について-日本民法典立法過程からの検討-
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22K13312
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
小出 隼人 西南学院大学, 法学部, 准教授 (60844818)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 贈与 / 寄付 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は前年度の日本法における贈与の立法過程に関する資料収集と分析を踏まえて、贈与と寄付の異同について検討してきた。具体的には、贈与と寄付に関するこれまでの議論状況を概観した上で、日本民法典立法過程の議論から、民法549条が規定する贈与がいかなる贈与を対象とするのか、民法553条の負担付贈与において「負担」とはいかなる内容を有するものなのかについて明らかにし、寄付を契約類型としての「贈与」として捉えることができるのか否かについて検討した。 その結果、寄付を贈与ないし負担付贈与として構成することについては、贈与における受贈者の利得の解釈が問題となり、義援金等に見られる寄付の場合、募集者は寄付によって利益を受けるわけではないので、受贈者の利得を厳格に解せば、贈与ないし負担付贈与として寄付を法的に構成することは難しいように思われるが、負担付贈与によって受贈者が受ける利益の価額と受贈者の負う負担の価額との間に対価的均衡が存在しないということについては、必ずしも客観的に決せられるものではなく、当事者の主観によって決することも可能であると考えられるのであれば、負担の内容や、受贈者が負担付贈与によって利得を得るかどうかついては柔軟な解釈が可能であるという結論が得られた。 そのほか、前年度の研究実績を基礎に民法の視点から寄付に関する法的議論状況を整理・検討した研究成果も公表することができた(坂本治也編『日本の寄付を科学するー利他のアカデミア入門』(明石書店、2023)17章担当)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究実績を踏まえ、本年度に研究成果を公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は日本法を主眼とするものであり、本年度において一定の研究成果を公表することができた。次年度は研究計画に従い引き続きドイツ法文献の収集・分析を予定しており、ドイツ民法典立法過程を中心に贈与と寄付の異同について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の前段階として、申請者は2019年8月に日本学術振興会科研費助成事業「研究活動スタート支援(研究課題番号/19K23150)」に採択されており、当時から寄付の法的構成に関する研究を継続して行ってきた。その際、本研究の目的に関わる資料を一定程度収集していたためである。また、研究計画にあった2023年度の研究資料の収集・整理については、研究計画調書(2021年度)の作成時から取り掛かっていたこともあり、当該助成金が生じたと考えられる。 今後の使用計画については、未調査のドイツ法文献の収集等を中心に経費を執行する予定である。
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