2022 Fiscal Year Research-status Report
福音派はアメリカの政治制度をどう見るのか:F・シェーファーの「世俗化」批判
Project/Area Number |
22K13332
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
相川 裕亮 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 助教 (30911911)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 福音派 / アメリカ合衆国 / 世俗化論 / 建国の父祖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アメリカ合衆国における保守的なプロテスタント、福音派の「世俗化」批判の論理・強調点の変遷を明らかにすることにある。福音派はアメリカをキリスト教国と信じ、アメリカの「世俗化」をキリスト教価値の喪失と解した。さらに、「世俗化」の推進者たちがアメリカの政治制度を歪曲しているとも福音派は考えた。 本研究は、福音派の「世俗化」批判に理論的な基礎を与えた神学者フランシス・シェーファーを中心に据えつつ、福音派の「世俗化」論とアメリカ政治制度解釈の結びつき方のバリエーションを示したい。その成果はアメリカ政治史やキリスト教史、宗教社会学に貢献し、現代の福音派と共和党の関係の起源を解明する一助になるだろう。 初年度は、二つの進展があった。 (1)シェーファーの「ヒューマニスト」批判を明らかにした。同時代の「ヒューマニスト」たちがアメリカの世俗化を推し進めているとシェーファーは考えていた。初期の代表作『理性からの逃走』を分析すると、ルネサンスの人文主義者から啓蒙主義者、実存主義者といった「ヒューマニスト」の系譜を描きつつ、その主観主義をシェーファーが批判していることが分かった。 (2)シェーファーが「建国の父祖」と16世紀宗教改革を結びつけて論じていることが分かった。後期の代表作『クリスチャン・マニフェスト』の中で、ジョン・カルヴァンやサミュエル・ラザフォードといった宗教改革期の指導者から、トマス・ジェファソンやジョン・ウィザースプーンといった「建国の父祖」への思想的継承が強調されていた。継承された思想をヒューマニストが歪曲しているというのがシェーファーの問題意識であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はおおむね順調に進展している。初期シェーファーの「ヒューマニズム」批判に関する論文を公刊し、彼の「建国の父祖」論に関する学会報告を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、シェーファーの「建国の父祖」論に関する論文の公刊を目指す。学会報告で得たコメントを活かし、建国の父祖と宗教改革とがシェーファーの思考の中でどのように結びついていたのかを明らかにしたい。
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Research Products
(3 results)