2023 Fiscal Year Annual Research Report
Rethinking "Centralization" of Political Parties: Formal Approach
Project/Area Number |
22K13337
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
上條 諒貴 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (20826515)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 集権性 / 集権化 / 政党組織論 / 執政制度論 / 日本政治 / 数理分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本政治研究において選挙制度改革を筆頭とする1990年代の諸改革の帰結として理解される、政党組織あるいは首相への「集権性」なる概念をあらためて検討し、数理分析の手法を用いて選挙制度の変化との関連をより厳密に分析するというものであった。この課題に対して、最終年度においては3つの取り組みを行った。 まず、初年度に引き続き、「集権性」なる概念についてのレビューを行った。アメリカ議会/政党研究や比較政党研究を幅広く検討した結果、「集権性」なる語は、①特定のアクターへの権限の集中、② 選挙環境によって定まる誘因構造の変化による制度的権限の効果の高まり、③ 特定のアクターの政策選好が実現されやすくなったという、行動レベルの記述、④リーダー以外のアクターの影響力の減少、など概念的/理論的に大きく異なる雑多な意味内容を含んでいることが明らかになった。 第2に、上述の検討を受けて、集権性を「政党執行部への権限の集中」の意味に限定したうえで、選挙制度と政党組織の集権性の間の関係を数理的に検討した。その結果、集権性自体が一般議員の内生的委任に基づく場合、政党投票誘因が高い選挙制度に変更されることが集権性に与える影響は一様でなく、執行部と一般議員の利害関係の在り方に依存することが示唆された。 第3に権限の集中という意味での「集権性」が高まることの効果についても派生する重要な課題として検討した。議院内閣制の文脈において、首相への権限の集中は首相の責任を明確にすると考えられるが、こうした集権性の高まりが首相の交代頻度を高める可能性があることなどを、数理モデルを用いて明らかにした。 初年度に公刊した数理分析に関する技術的なノートと合わせ、本研究の成果は、「集権性」という概念の精査を通して、政党組織論や執政研究に貢献するものと考える。
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