2022 Fiscal Year Research-status Report
ラオスの社会主義国家建設と伝統的権威:現存する社会主義国家の強靭性の観点から
Project/Area Number |
22K13343
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
南波 聖太郎 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東南アジアII研究グループ, 研究員 (80808329)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ラオス / 社会主義 / 伝統的権威 / 革命 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
ラオスでは1975年の「革命」によってマルクス・レーニン主義政党であるラオス人民革命党が政権を掌握したが,その時点では王族,貴族,高僧などの伝統的権威や,それらと深い繋がりのある旧中立派などの政治勢力が社会的影響力を保持していた。本研究では,党がそれらの勢力をどのように取り込み,あるいは排除することで一党支配体制,すなわち社会主義体制を確立していったのかを,ベトナムや中国,ソ連などの関与にも着目して分析する。 研究期間の初年度にあたる2022年度は,当初予定していたラオスとベトナムでの現地調査を現地の新型コロナウイルス感染状況などに鑑みて延期し,国内でラオス人民革命党の公刊および未公刊資料,ベトナム共産党の『党文献全集』などの分析を進めた。山岳地域を中心に革命運動を展開してきたラオス人民革命党は,「革命」直後の時点でも特に都市部での影響力は限定的であり,国家運営の面では旧体制の官僚などを活用せざるを得なかった。そのため都市住民に強い影響力を持つ伝統的権威や旧中立派と一定の連携を継続しつつ,党員の養成などに本腰を入れて人材不足の解消を図ったことが明らかになった。またこうした政治戦略を実施するうえでベトナムの支援は極めて重要であり,ベトナム人党員が政治,経済,軍事などの分野の顧問としてラオスに派遣されてラオス人党員の不足を補うとともに,ベトナムの党学校へのラオス人の派遣留学が拡大していったことなども確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染状況などから,当初予定していたラオスとベトナムでの調査を実施できなかったが,すでに入手済みの現地語資料などの分析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は上半期に育児休業を取得するため,下半期から研究計画を再開する。2022年度は現地調査を実施できなかったため,2023年度以降に回数を増やして実施し,ラオス語とベトナム語の公刊・未公刊資料の収集,ラオス人党員への聞き取り調査を進める。
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Causes of Carryover |
予定していた現地調査を実施しなかったため,旅費および現地語資料購入費を支出しなかった。また現地調査に携帯するためのPC購入も延期した。現地調査は,翌年度以降に順延して実施する。
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