2023 Fiscal Year Research-status Report
IMFの先進諸国に対する自律性――企業と国際組織の直接協力による国家のガバナンス
Project/Area Number |
22K13345
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
藤田 将史 関西学院大学, 法学部, 助教 (80882878)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | Vienna Initiative / 金融危機 / 東欧 / 民間金融機関 / IMF |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はVienna Initiative(以下VI)の過程追跡を進めた。まず、文書・資料調査については以下のように行った。最初に、なぜ銀行がVIの制度化された協調にコミットしたのかについて、VI自体や、European Bank for Reconstruction and Development(EBRD)、International Monetary Fund(IMF)等が作成したレポートやプレス・リリースを調査した。さらに、英語新聞の他、VIに参加した民間金融機関が位置する独・仏・伊・墺・瑞・白など各国の新聞資料を調査し、各民間金融機関が置かれていた政治・経済的状況について確認し、VIへの参加の背景・動機の手掛かりを収集した。加えて、VIで公的セクター側の代表として中心的役割を果たしたIMFの内部文書を、東欧危機中の理事会文書・議事録を中心に調査し、IMF側が民間金融機関とどのような協議を行い、民間金融機関側の動機をどのように認識していたか確認した。 その上で、主要銀行でVIを担当した役員・上級職員や、IMF側の担当者にインタビューを行い、銀行側の動機について当事者の証言を確認した。結果として、想定よりも幅広い動機がVI参加につながっていたことが明らかになり、仮説について若干の修正が必要になった。しかし、当初想定していた仮説の中心的要素については、おおむね実証に成功したものと考えている。すなわち、「IMFを利用して、母国・EUを含む公的主体間の集合行為問題を解決すること」が、民間金融機関のVI参加の動機であったというものである。 以上の成果は、2023年11月11日の日本国際政治学会2023年度研究大会(福岡国際会議場)で報告した。現在は論文としてまとめており、間もなく査読誌に投稿する予定である。可能な限り早く、出版につなげたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には計画の見直しが必要になったが、2年度目である2023年度には修正後の計画に従い、Vienna Initiativeについての調査を完了することができた。当初の計画でも、Vienna Initiativeの調査に2年間をかける予定だったため、おおよそ遅れを取り戻したと言える。よって、おおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、Vienna Initiativeの事例研究に加えて、民間金融機関-IMF間協力のデータセットを作成して計量分析を行う予定であった。よって、IMF文書館等で調査を行いつつ、データセットの作成のために情報収集を進めたいと考えている。 ただしこれまでの調査では、民間金融機関側がどの程度IMFに協力したかのデータが多数事例で思うように得られない可能性も示唆されている。その場合には、事例研究を通してさらに因果メカニズムを追究するなど、研究方法を修正しつつ成果を上げたい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、研究機関が変更になり、新たな研究機関である関西学院大学で別途研究費が得られたためである。結果として、両方の予算を使用して最大限の成果を上げるべく、予算の使用予定を修正した。次年度使用額については、もともと予算が不足していた海外での調査(IMF文書館など)に充てる予定である。
|