2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K13361
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野田 俊也 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (70934727)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 仮想通貨 / 経済学 / ブロックチェーン |
Outline of Annual Research Achievements |
仮想通貨システムの安定性について、経済学的に分析した2本のワーキングペーパー、"An Economic Analysis of Difficulty Adjustment Algorithms in Proof-of-Work Blockchain Systems" と "Miners' Reward Elasticity and Stability of Competing Proof-of-Work Cryptocurrencies" の改訂と、対外的な研究報告、そして掲載へ向けた投稿を行った。これら2本の論文は、いずれもビットコインなどの仮想通貨システムが、一定の状況下では目標とするスピードで決済を処理できなくなる危険性を分析したものであり、拡大を続ける仮想通貨市場が潜在的に抱えるリスクを明らかにし、その解決策を模索する上で、重要な手がかりとなるものである。前者の論文では、均衡における仮想通貨システムのふるまいを理論的に分析し、ビットコインが現在使用している難易度調整アルゴリズムには欠陥があり、マイナーがマイニングの収益性に敏感に反応してハッシュレートの供給を調整する場合、マイニングの難易度を調整することに失敗してしまい、決済の速度が目標から大きく外れてしまうことを証明した。後者の論文では、仮想通貨の安定性を左右する報酬に対するハッシュレートの弾力性について実証的な分析を行い、前者の論文で予想された危機が、実社会で問題となりうることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、本研究計画に関連する研究発表を、CBER、IIOC、AEA Annual Meeting、一橋大学、DASF、香港中文大学などで行うことができた。 ワーキングペーパーの1本("An Economic Analysis of Difficulty Adjustment Algorithms in Proof-of-Work Blockchain Systems")については、幾度かの投稿と不採択を経て、現在国際学術誌であるInternational Economic ReviewからRevise and Resubmitの機会を得ている。 もう一つの完成したワーキングペーパーである"Miners' Reward Elasticity and Stability of Competing Proof-of-Work Cryptocurrencies" についても、幾度か投稿と不採択を経ているが、まだ採択に向けた返事は得られていない。現在は国際学術誌であるManagement Scienceに投稿中である。 その他、もう1本の論文を来年度中に完成させられる見込みが立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様、フィードバックをもとにワーキングペーパーを改良し、論文をパブリッシュすることを目指すと共に、進行中の研究についても、なるべく早く対外的に公開できるよう努める。
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Causes of Carryover |
円安と、航空運賃の高騰のため、2023年1月に行われた American Economic Association Annual Meeting への旅費が足りず、科研費の前倒し請求を行ったが、異なる研究資金から旅費を工面できたため、その分が残り、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(6 results)