2022 Fiscal Year Research-status Report
異質な集団が混在するデータに対する分位点回帰モデル
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22K13375
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 翼 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (90849001)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 分位点回帰 / クラスタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
パネルデータに対して、回帰係数が個体ごとに異なりうる状況での分位点回帰問題について、同一個体からの観測値の相関構造を考慮したうえでパラメータを推定する手法を考えるべく、個体は有限個のグループに分割され、同じグループに属する個体は同じ回帰係数を共有するといったモデルを考えた。よって、グループ数の推定・各個体が属するグループの同定・各グループにおける回帰係数の推定を同時に行うためのアルゴリズムを考案することが目標となる。 そのためにはパラメータを推定するための目的関数が必要となるが、同一個体からの観測値の相関構造を考慮した手法として提案された2次推定関数を用いることとした。しかし、本研究の設定に対しては単純に2次推定関数を用いることはできない。なぜなら、2次推定関数は統計モデルのモーメント条件から構成されたものであるが、本研究ではモーメント条件がグループの数だけあり、またどの個体がどのグループに属しているか不明であるため、モーメント条件にもとづいた推定方程式を作ることができないからである。そこで、2次推定関数の考えを基本としつつ、回帰係数が全体の回帰係数の平均と外れる部分を変量効果とみなすことで、疑似尤度により固定効果である全体の回帰係数の平均と変量効果とみなした各個体に特有の係数をもとめるための損失関数を構成した。また、同じグループに属する個体の係数が同じになるように、上述の損失関数にLasso型の罰則項をいれたものを目的関数とした。 また、上述の目的関数を最適化することで得られるパラメータの推定量の統計的性質を考えた。今年度では、説明変数を固定した場合に回帰係数の推定量の一致性と同じグループに属する個体の係数が同じになるといったグループの同定ができることについては示すことができ、原稿にもまとめている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べた通り、今年度はパラメータを推定するうえで必要な目的関数として合理的なものを考えることができたが、それに時間を要した。そのため、パラメータの推定量の統計的性質に関して、説明変数を固定した場合の回帰係数の推定量の一致性とグループの同定ができることについては示すことができたが、その他の理論的研究として、罰則項にかかるチューニングパラメータの値の選択を決めるための規準を提案し、それによって正しいグループ数がもとめられることを示す必要が残っている。また、今年度は説明変数を固定した場合で考えていたため、それを確率変数としたときの理論的考察を行うべきでもある。さらに、数値実験による提案手法のパフォーマンスの確認や実データ解析への応用など行うべき事項が数点残っているため、やや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べた通り、理論的研究としては、罰則項にかかるチューニングパラメータの値の選択を決めるための規準をBIC型の情報量基準をもとに提案し、それによって正しいグループ数がもとめられることを示さなければならない。また、説明変数を確率変数としたときのパラメータの推定量の理論的考察を行う予定である。さらに、数値実験による提案手法のパフォーマンスの確認や実データ解析への応用を行う。実データ解析としては、選挙データを用いて、いくつかの要因や時間の経過によって有権者の政治的関心がどのように変わるのか、また異なるグループによってそれがどのように異なるのかを検証する予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗の遅れから学会発表する機会がなく想定していた旅費を使うことがなかったため当該助成金が生じた。翌年度では、書籍等の研究に必要な物品の購入に加え、国内外の学会や研究打ち合わせの旅費に使用する予定である。
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