2022 Fiscal Year Research-status Report
都市ガス市場自由化による導管延伸問題の評価に実装可能な最適投資モデル構築の研究
Project/Area Number |
22K13378
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
花田 真一 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (90636458)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 都市ガス市場 / 市場拡大投資 / フリーライダー問題 / 公共財の過小供給 / エネルギー市場の自由化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、都市ガス市場の競争環境の特性に基づいたガス会社の投資行動のモデル化に取り組んだ。都市ガス市場の特徴は、①ガス管が設置されている地域において、自由化によって都市ガス供給会社間での競争が行われる、②競合財・代替財であるLPガスが存在する、③理論上はLPガス会社が都市ガスの配管が行われている地域に供給することも可能だが、供給コストの差から価格面で不利になり、配管されているエリアを境界として市場のすみ分けが行われる、④都市ガスの配管は各地域で独立しているため、都市ガス会社が参入するためには現地に供給施設を作るか、契約により供給施設を利用する必要がある、という4点である。また、③で触れた供給コストについては、都市ガスのガス自体の供給コストは配管にガスを流せば良いため、個別の貯蔵施設に定期的に補給を行う必要があるLPガスよりも安いが、ガス管の敷設費用はLPガスの個別供給施設に比べて高い傾向にある。 以上の特性により、都市ガス会社のガス管に対する投資は、市場の拡大と言う側面がある。一方で、都市ガスについても自由化が行われており、ガス管の延長投資は競合他社の供給費用を結果的に低下させる性質を持つ。つまり、他社のガス管投資を待って参入を行うフリーライダーのインセンティブが存在することになる。これにより、自由化前に比べガス管に対する投資が減少し、過小供給が発生し、結果的に消費者余剰が損なわれる可能性がある。 日本では、電力・ガス・水道といった公共インフラについて、自由化が進められている。これらの自由化は諸外国を参考にしつつ進められているが、より日本の特徴をふまえた修正を行う必要がある。本研究は、そのための知見をまず理論面から検討することで得ることを目指すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
都市ガス市場のガス管への投資行動について、基礎的なモデルは構築できているが、学会報告や論文としての公表がまだできていない。今年度中には理論部分を論文として公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、実証的な政策評価のためのデータの収集と、基礎的な分析を行う予定である。また、理論モデルを構築する中で、電力市場や水道市場の市場特性と比較可能なモデル構築の可能性も発見できたため、並行して進めることができればと考えている。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナの影響もあり、学会がオンライン開催されたため、旅費の支出が大学支給の研究費で賄えた。2023年度からは対面開催の学会が増え、参加機会が増えると考えられるため、次年度に繰り越した。 また、市場の自由化により公開される情報が年々減っており、周辺情報からデータを作成する必要があると考えられる。そのための費用の自由を確保するために、次年度に繰り越した。
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