2023 Fiscal Year Research-status Report
Analyses on Tax Competition under Diversified Economic Integration: Interlink between Several Integrations
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22K13390
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大越 裕史 岡山大学, 社会文化科学学域, 講師 (90880295)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 租税競争 / 多国籍企業 / 経済統合 / 外国資本規制 / 租税回避 / デジタル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の2年目は、予定していた3つの研究課題のうち(A)海外直接投資規制の緩和と(C)デジタル化によるボーダーレス社会の実現が租税競争に与える効果の研究については、研究期間初年度の進捗をもとに国際学会での報告や修正を行いディスカッションペーパーとして公開することができた。
また、当初は計画していなかったが(D)財の生産に伴う越境汚染排出と(E)輸送設備への公共投資についての研究を追加的に始めており、国際学会の報告に向けた準備をしている段階にある。研究(D)では、越境汚染水準、地域内貿易費用、企業間の環境にやさしい記述水準の違いの3要素によって租税競争の効果や企業の立地選択が特定づけられることを明らかにした。特に注目すべき結果として、貿易自由化等の促進で輸送費が極めて小さい時には、市場規模が小さい国に企業が立地しやすいという、既存研究の結果とは逆の結果が得られた。これは市場の大きい国には現地で生産する企業が多く、追加的に海外企業を誘致することで得られる利益が少ないためであり、財政政策は補助金ではなく税金になりやすいためである。この結果は、貿易自由化によって輸送費が小さくなっている現代において、企業立地のパターンがこれまでの予想から変容する可能性を示唆している。
研究(E)では、港や空港といった輸送施設への公共投資がある下で、租税競争がどのような影響をもたらすかを分析している。主要な結果として、租税競争が企業立地に影響を与えない場合であったとしても、租税競争が公共投資を増やし、その地域にとって好ましい効果をもたらすことがあるということである。そのためには、地域間の輸送費が十分に小さくあるということが必要であるということが判明した。以上の結果より、OECDが長らく懸念している有害な租税競争を引き起こすかどうかは、グローバル化の進む近年においては再検討の余地があることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では4年間で3つの研究を行うことを想定していた。当初の計画では、研究(A)は1~2年目、研究(B)は2~3年目、研究(C)は3~4年目にかけて遂行することを計画していたものの、研究(A)及び(C)はディスカッションペーパーとして公開しており、予想を大きく上回る進捗になっている。一方で、研究(B)多国籍企業による国家間の金銭輸送が容易な金融制度の拡充については、当初予定していた研究計画と類似した研究報告を聞いたため、研究案について何らかの修正が必要である。
しかし当初の計画に加えて、研究(D)及び(E)は計画外の好ましい進捗であり、どちらの研究も研究期間3年目に国際学会での報告することが決定しており、3年目のディスカッションペーパーとして公開が十分可能である。
以上を踏まえると、研究計画案に若干の修正が求められる状況ではあるものの、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間3年目は、現在海外の査読付き学術誌に投稿中である研究(A)と(C)について研究期間中の受理を目指し活動をしていく。さらに、研究(D)と(E)を国際学会で報告することを通じて、3年目のうちにディスカッションペーパーとして公開することを目指し、これらも早期に海外の査読付き学術誌に投稿できるように目指す。また、修正が要される研究(B)については、研究計画4年目あるいは大幅な研究方針の変更も含めてどのような修正案が必要かについて検討をし、4年目以降にセミナー報告ができるようにモデルの構築と分析を進めていく。
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Remarks |
科研プロジェクトに関する個人ページ。 別のページには、これまでの科研の研究課題や別の個人研究に関するページもあり。
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Research Products
(5 results)