2022 Fiscal Year Research-status Report
銀行vsベンチャーキャピタル:スカウティングとコーチングの観点から
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22K13437
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
野島 栄莉子 (内木栄莉子) 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (50780350)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 企業金融 / 金融機関 / 現金保有 / 企業向け融資 / ソフト情報 / ハード情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、以下のとおり、論文の改訂およびアンケートを用いた分析を行った(いずれも大鐘雄太氏(南山大学)との共著)。 第一に、2008年の金融危機に焦点を当てながら「銀行の健全性が企業の現金保有に与える影響」について検証した論文の改訂を行った。本論文では、2008年の金融危機時に、メインバンクの毀損は企業の現金保有を増加させていたこと、さらに、この傾向はメインバンクとのリレーションシップが不安定な企業で顕著であったことを明らかにした。 第二に、企業を対象に実施した「新型コロナウイルス感染症拡大禍における企業金融に関する実態調査」によって収集したデータを使用して、企業の現預金の保有状況や金融機関との取引関係について分析した。その結果、(1)現預金の保有量を「ちょうどよい」と考えている企業がおよそ半数を占めている、(2)企業は、資金調達手段および現預金保有の原資として、主に金融機関借入と営業取引から生じた現金収入を利用している、という傾向が観察された。 第三に、金融機関を対象に実施した「企業向け融資に関する実態調査」によって収集したデータを使用して、金融機関が貸出を行う際に利用する情報について分析を行った。その結果、(1)ソフト情報のみ利用可能な新規貸出先に対する融資では、企業の経営力、経営者の資質、プロジェクトの順に重視する、(2)ソフト情報とハード情報の両方が利用可能な新規貸出先に対する融資では、各ソフト情報よりもハード情報である財務諸表を重視する、という傾向が観察された。 なお、先述の2つのアンケートの集計結果は、ワーキングペーパーとしてまとめ、公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、実施予定だった銀行とVCをともに利用したことがある企業を対象としたアンケートは、研究計画を変更したため実施できなかったが、当初の予定どおり、「研究業績の概要」に記載した論文の改訂および分析を行うことができた。したがって、本研究課題は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
企業を対象とした銀行借入とVCによる資金調達に関するアンケートを設計、実施する計画である。さらに、同アンケートによって収集したデータを使用した分析にも着手する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度にデータ購入(物品費)およびアンケート委託(その他)を予定していたが、研究内容の変更に伴い、経費の使用を見送った。いずれも次年度、購入する予定である。
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Research Products
(2 results)