2023 Fiscal Year Research-status Report
規格標準化形成プロセスから見る産業発展 -戦前の自転車産業における日英比較-
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22K13438
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Research Institution | Nara Prefectual University |
Principal Investigator |
山部 洋幸 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (90785859)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 自転車 / 戦間期 / 国際比較 / モジュール化・規格化・標準化 / 後発優位性 / 経営史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は戦間期の日英の自転車産業を対象に国際的な比較を通じて、互換性を持った製品設計への規格統一(モジュール化)へと至るプロセスおよびメカニズム、そして、その後の国際市場の状況を明らかにすることである。具体的には、(1)戦前におけるモジュール化という経営活動から、日本の経営史の一端を描き出す。(2)モジュール化がいかにして起こるのか、そのプロセスと影響を明らかにする。(3)モジュール化の動きが国際市場展開にどのように結びつくのか明らかにする。 前年度に収集した資料を用いて、日本とイギリスで一部データの比較を行った。本研究の視点として、部品の互換性に着目しており、部品が統計上占める割合について両国を比べた。これは特に(3)に関連するものである。1930年代の自転車の完成車と部品の輸出の比率は日本は9割近くが自転車の部品の輸出で、英国は6割程度であった。日本は部品の輸出比率が高く、日本の自転車の輸出のほとんどが部品であったことが伺える。当時の日本の新聞やインタビューを参考にすると、輸出された部品は現地で組み立てられるが、それは全て日本製の部品ではなくイギリス製やドイツ製の部品を用いて完成車として販売されることもあったようである。これら内容から国際的に部品の互換性が保たれ、展開されていると言えそうである。また、アジア圏の輸出先における販売価格を見ると日本の自転車の価格はイギリスやドイツと比べ、半額以下の価格で販売されている点も明らかとなった。この点については日本の自転車産業の零細性の指摘も見られるが、部品の互換性との関係について研究を進める必要があると言える。 本年度においてはこれら研究成果の一部を海外学会、国内学会および学内研究会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はイギリスで収集した資料をもとに研究成果の一部を海外の学会、国内学会、学内研究会で報告し、有意義なコメントをいただいた。コメントではブロック経済の状況把握や、為替の影響について指摘があり、それら議論は今後の資料収集および研究方針に役立つものであると考えている。よって、資料収集だけにとどまらず、研究成果として報告できた点で本年度はおおむね順調に研究及び調査が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、学会報告でのコメントを踏まえながら、日本国内の資料収集を進めていく。また、追加で必要であればイギリスにおける史料も継続して収集に努める。あわせて、収集したデータの議事録、財務データをもとに分析を進める。そして、それら分析をもとに論文等の出版物の形の成果物を目指す。
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