2022 Fiscal Year Research-status Report
制度のはざまに関する組織論的研究:国際経営を巡るエージェンシー問題の克服に向けて
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22K13459
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
藤野 真也 麗澤大学, 国際学部, 准教授 (40854245)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 制度のすきま / ビジネスと人権 / 外国公務員贈賄 / 海外腐敗行為 / エージェンシー理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究につき、主に、次の2つの点において成果を得ることができた。 1. 過去の研究成果に、2022年度の成果を追加する形で、当該研究課題に関する書籍『グローバルリスクとしての海外腐敗行為ー内部統制機能不全の克服に果たす経営者の役割』を出版した。報告者は、これまですでに、約10年にわたって当該研究課題に関連する研究を行ってきた。この成果をもとに、当該研究の計画に沿って、2022年度に企業倫理における国際学会の大会(ISBEE)に参加し、そこで研究報告を行うことで、当該分野のエキスパートと意見交換を行うとともに、ネットワーキングを行った。ここで報告した内容に、学会報告において得られた意見をもとに修正を加える形で内容を整理し、これを論文「日本企業による海外腐敗行為防止の取り組み状況―組織の視点から考える制度のすきま」『麗澤経済研究』2023年として執筆した。さらに、この内容を一つの章として取り上げる形で、上述の書籍を出版することができた。 2. 国内のマーケティングリサーチ会社と協力し、「ビジネスと人権」に関するケースをもとにしたアンケート調査を実施するため、同社と共同で、ケースと選択肢の作成に着手した。このアンケートで取り上げるケースの一部には、当該研究分野の主要な課題である「海外腐敗行為」が含まれている。ここで得られたデータをもとに、当該研究で示された仮説を実証することができると期待している。2022年度には、すでにパイロット調査を実施し、データを入手することができた。2023年度に向けて、このデータの分析にも着手しており、ここで得られた結果をもとに、アンケートに用いるケースと選択肢を修正し、新たに調査を行うことで、本格的な分析を行うためのデータを入手する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究は、日本企業における本社と海外拠点においてエージェンシー問題が生じるメカニズムを明らかにすることに、主たる目的がある。そのために、日本の本社側の従業員を対象とした調査と、海外の現地拠点の従業員を対象とした調査を並行して行うことを予定している。この予定に従い、2022年度は、主に、本社側の従業員の調査を行ってきた。現在は、その準備段階として、前述の通りパイロット調査を行い、これをもとにケースと選択肢の修正に着手している段階である。この調査は「ビジネスと人権」という広いテーマを扱うものであるが、このテーマの主張な一部として、当該研究課題の対象である「海外腐敗行為」が含まれるため、当該研究の遂行においては問題を生じないと考える。 他方で、海外拠点の調査を行うにあたり、まずは海外の学会に参加し、ネットワーキングを行うことで、現地の調査対象として協力していただける企業関係者を探してきた。当初は、過去に調査を行った実績のあるインドネシアとタイでの調査を予定していたが、学会に参加する中で、ベトナムに進出する日本のリサーチ会社の協力を受けることができるようになった。昨今は米中のデカップリングの影響を強く受ける形で、ベトナムへの日本企業の進出が俄に盛んになっている点に鑑み、まずはベトナムを調査対象とし、日本企業の現地法人における従業員の調査を進めていくこととした。ベトナムは社会主義国であることから、国内社会に腐敗行為が蔓延している側面もあり、当該研究を実施する国として、インドネシアやタイと比べても、妥当性は十分に高い国だと言え、当該研究が想定する仮説の実証手段として、ベトナムに進出する企業を調査対象とすることに問題はないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、主に、次の2点を中心に、当該研究を遂行する。 1. 上述のマーケティングリサーチ会社の協力を得て実施するアンケート調査によって、日本の本社側における従業員の行動に関するデータを入手し、これを分析することで、本社側のマネジメントに関わる仮説を実証する。当該研究の申請書を執筆する時点で構築していた仮説をもとに、より広い範囲で先行研究レビューを行い、仮説を精緻化するとともに、この仮説に照らしながら、またパイロット調査の結果を踏まえながら、今年度実施するアンケート調査のケースと選択肢を作成する。そこで得られた結果をもとに、仮説の実証手続きを進めていく。 2. 日本のリサーチ会社の現地拠点のサポートを受ける形で、7月から9月にかけて、約2ヶ月間、ベトナムのホーチミンに滞在し、日本企業の現地拠点関係者にヒアリングを行い、日本企業の海外拠点関係者が、本社のマネジメントに対してどのように反応しているかにつき、複数ケーススタディ研究の手法を用いて仮説の精緻化を行う。まずは、現地の商工会議所をはじめ、企業団体にアクセスし、日本企業関係者との間でネットワーキングを行い、協力企業を募る形でヒアリングの予定を設定し、実施したヒアリングに基づいて、結果を整理する形で、仮説の精緻化を進めていく。
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