2022 Fiscal Year Research-status Report
個人と組織の心理的距離の探求 -個人の能動的な行動が組織に与える影響について-
Project/Area Number |
22K13460
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
大橋 重子 大正大学, 地域創生学部, 准教授 (70910959)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 心理的距離 / EOR / 個人ー組織関係 / 組織行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は企業における従業員と組織の関係性に注目し、心理的距離が個人の行動に及ぼす作用について複眼的な研究により明らかにすることを目的とする。個人と組織の関係性に注目した「従業員-組織関係」(以下EOR)研究では、一体感や帰属意識など個人と組織が近い関係性に注目が集まり概念化が進められ、距離をとることによるポジティブな側面については、ほとんど解明されていなかった。しかし、心理的距離の分析結果では、距離の調整が個人の行動変容に結びつきポジティブな影響を与えていた。本研究では、心理的距離の概念の一般化に向け①質問票調査、②インタビュー調査をおこない所属組織に心理的距離を抱くことによる具体的な影響を検討し明らかにする。 本研究における学術的「問い」は、組織コミットメントをはじめとしたEOR研究において暗黙知として存在している前提、個人と組織の関係性が近いことが両者にとってポジティブであり、離れることがネガティブとするのが例外なく真なのかという点である。この問いを明らかにするため、本年度は先行研究レビューと定量調査を中心に活動を行った。 具体的には、コロナ禍における働き方の変化について、テレワークをはじめとした取り組み事例や実施状況のデータ、関連する先行研究のレビューを行い、働く個人と所属組織との関係性の変化についての動向を追った。 定量調査として、第1の目的である心理的距離をとる行動の測定尺度の精度を向上させ概念を一般化し完成させることに関連した測定尺度のブラッシュアップ作業を中心に行った。その上で、企業特性の影響を取り除いた横断的調査デザインを用いて、日本企業に勤務する正社員500名を対象にした定量調査を実施しデータ収集した。 今後は入手したデータ分析を進め、心理的距離をとる行動の現象特性を明らかにするとともに、既存のEOR概念との弁別性についても検証を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、初年度に1回目の分析結果をまとめるところまでを考えていたが、実際にはデータ収集を実施するところまでとなっった。現在、分析作業を継続的に進めている状況である。 今回、企業特性を取り除いた横断的な対象者に向けての調査をするにあたり、費用面から質問項目数の調整が必要になったため、その作業に時間がかかった。次回以降は、費用の概算が分かった上での作業となるため、今回の経験を踏まえてスケジュールを考え進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下のとおりである。 第1に、現在作業を進めているデータの分析結果を用いて、心理的距離の現象特性について明らかにした上で、その概要を学会報告する。具体的には9月頃を予定している。 第2に、その分析結果を踏まえて、調査対象人数を増やした形での本調査を行う予定である。 第3に、学会報告をした内容をもとに論文を執筆し、投稿の準備を行う。 以上、3点が今後の具体的な活動予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、本年度中に大規模調査を含めたデータ収集を2回行う予定であったが、実際には1回のみとなったため、差額が生じている。この金額分については、次年度に調査を実施するため必要になる経費である。 また、学会への参加や発表等を予定していたが、実際にはオンライン開催等がほとんどで旅費を使用する機会がなかった。こちらに関しても2023年度は対面での学会開催が多く予定されているため、必要な経費として使用する予定である。
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