2022 Fiscal Year Research-status Report
「柔軟な働き方」をめぐる職場の分断メカニズムの解明:フォールトラインによる分析
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22K13481
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
内藤 知加恵 麗澤大学, 国際学部, 准教授 (70881192)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フォールトライン / ダイバーシティ / 多様な働き方 / 分断 / 柔軟な働き方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダイバーシティ・マネジメントの負の側面である「職場の分断」に焦点を当てる。近年、日本において女性労働者の比率が高まる中、「柔軟な働き方(Flexible Work Arrangement: 以下、FWA)」が可能となった。FWA利用の高まりは、その利用対象者にとってみれば好ましいが、職場レベルでは様々な負の影響も想定される。その一つが、FWA利用者と被利用者の間の分断、すなわち「サブグループ化」である。本研究は、分断の客観指標である「フォールトライン」概念を用いて、集団・個人の視点から、FWA利用の有無が、個人の心理に影響し職場集団内を分断する「分断プロセス」を考察し、FWAの負の効果を低減する制度設計に繋げるものである。 本研究では、①FWA利用に基づく分断発生プロセスと、②FWA利用に基づくフォールトラインの分断影響プロセスの、2つの側面を検証する。①の検証としては「サブグループの類型」に着目した。まず、既実施調査(研究活動スタート支援)から得た一次データを分析した。1年以内に、育児のための短時間勤務利用をしたことがある「利用者」、1年以内に、育児のための短時間勤務利用者と同じ職場で働いたことのある「被利用者」から、職場分断に関して回答してもらい、テキストマイニングを実施した。分析の結果、サブグループの類型について、既存理論と整合する部分、しない部分の双方が示された。成果は各種研究会で公表し、研究者および実務家からコメントを得た。また、FWAおよび多様な人材のマネジメントに関する最新の研究動向について、海外学会(オンライン)で情報収集を進めた他、国内研究者と意見交換を行った。 また、②に関して文献研究を進めた。文献調査で得られた成果は、2022年2月、博士論文の結果と共に書籍「フォールトライン 組織の分断回避へのアプローチ」(白桃書房)として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、概ね当初の計画通りに進んでいる。「研究実績の概要」で述べたように、本研究では、①FWA利用に基づく分断発生プロセスと、②FWA利用に基づくフォールトラインの分断影響プロセスの、2つの側面を検証する。 現在までに、①FWA利用に基づく分断発生プロセス、を検証するため、データ分析を行い準実験の準備を進めた。データ分析は、育児のための短時間勤務利用をしたことがある「利用者」と、育児のための短時間勤務利用者と同じ職場で働いたことのある「被利用者」に対する既実施調査から得られたデータに基づいて行った。これらの分析結果を元に、準実験を用いた調査の準備を進めた。当初は準実験は22年度中の実施を予定していたが、既存データの分析を先に進めたため、23年度6月実施予定となった。 ②FWA利用に基づくフォールトラインの分断影響プロセスについては、22年度は国内・海外学会に参加し、フォールトラインとFWAに関する情報収集と文献研究を行った。また、FWAは国によって内容も大きく異なるが、今回調査対象とした短時間勤務は、他国でも共通する施策の一つであることが示された。文献調査で得られた成果の一部は、2022年2月、博士論文の結果と共に書籍「フォールトライン 組織の分断回避のアプローチ」(白桃書房)に収録した。
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Strategy for Future Research Activity |
①FWA利用に基づく分断発生プロセスの検証を進める。まず、育児のための短時間勤務利用をしたことがある「利用者」と、育児のための短時間勤務利用者と同じ職場で働いたことのある「被利用者」に対して、準実験の方法を用いた調査を実施する。これにより、短時間勤務利用の有無によって、サブグループ化が知覚されるかを検証する。この調査は、当初は22年度中の実施を予定していたが、既存データの分析を先に進めたため、23年度6月実施予定となっている。当該調査の質問項目の選定やサンプリングの準備が整い次第、調査を実施する。得られたデータを元に、分析を行い、結果を年内に国内学会年次大会で公表予定である。 ②FWA利用に基づくフォールトラインの分断影響プロセスを検証するため、フォールトラインとFWAに関する文献研究を行う。フォールトラインに関する研究は、ほとんどが海外学会および英文ジャーナルで発表される。英文ジャーナルのデータベースを通じた文献研究はもちろん、23年度も引き続き海外学会に参加し、フォールトライン/ダイバーシティの専門部会のセッションに参加し、情報収集を行う。また、成果を国内外ジャーナルに投稿するため、執筆を進める。
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Causes of Carryover |
調査実施経費(その他)を22年度に使用予定であったが、22年度は既存データの分析から着手したため、23年度にオンライン調査会社を利用した調査(準実験)を実施予定である。また、22年度にAcademy of Management(米国経営学会)年次大会参加のために旅費を計上していたが、22年度は新型コロナウイルス対応のためハイフレックス実施になり、オンラインで参加した。同学会は、23年度は対面でのみマサチューセッツ州ボストンで実施されるため、学会参加旅費として23年度に利用する予定である。
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Research Products
(4 results)