2022 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンサーマーケティングにおける商業的意図の曖昧性が消費者不信に及ぼす影響
Project/Area Number |
22K13503
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Research Institution | Yokohama College of Commerce |
Principal Investigator |
渋瀬 雅彦 横浜商科大学, 商学部, 准教授 (00906539)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インフルエンサー / 商業的意図 / SNS / 説得知識 / 関与 |
Outline of Annual Research Achievements |
22年度の研究実績は、主に以下2点を対応した。 第一に、機能的訴求の投稿内容における商業的意図の開示が及ぼす影響についてである。消費者調査を行ったうえで、商品特徴を詳細に説明した投稿の場合に便益タグを提示した場合の効果を検証した。機能的訴求の場合、投稿内容から企業の説得意図を知覚しやすいため、#PRなどの便益タグを提示することによって、投稿内容への信頼性低下を軽減できることを仮説として設定した。有名人と一般消費者の2つの情報源別に実験を行い、パス解析を行った所、有名人提示の場合に、便益タグ開示が投稿内容の信頼性低下を抑制することを明らかにすることができた。これらの研究成果として、学会発表(第64回消費者行動コンファレンス2022年5月)と論文投稿(横浜商大論集,56(2),pp87-110)があげられる。 第二に、情緒的訴求の投稿内容における商業的意図の開示の影響について情報源別に検証を行った。セレブリティ・メガ・マクロ・ミクロ・ナノの5つの情報源に区別して、便益タグ開示による影響の差異について検討した。実験調査を行い、フォロワー数やプロフィール内容によってコントロールされた情報源特性によって、便益タグ開示がどのような影響を及ぼしているかを検証した。現在分析中であるが、関与の高低と情報源の区別によって便益タグ開示の影響が異なることが確認できている。具体的には、マイクロやナノなどの商業的意図が含まれにくいとされる情報源の場合、高関与な消費者の場合、便益タグを提示することにより広告認識が高まること、マクロやマイクロでは、低関与の場合に購買意向が高くなることである。これらの検証結果と仮説を精査していき、2023年5月の日本商業学会において発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インフルエンサーマーケティングにおける商業的意図の開示有無について、実務領域では業界団体が提示方法に関するガイドラインを作成して運用されていた。しかしながら、2022年秋より消費者庁がステルスマーケティング検討会を開催して、インフルエンサーマーケティングにおける商業的意図開示に関する法的規制の検討が始められた。このため、これまで運用されていた便益タグ(#PR,#協賛、#Promotionなど)の開示方法が変更される可能性が考えられた。よって、消費者調査の意義を実務的に高めていくために、検討会の進捗を確認しながら、実査方法や仮説作成を行う必要がでてきた。 以上のような、外的な検討状況を精査する必要があったため、当初2022年秋に実施予定であった消費者調査が2023年3月に実施することとなり、研究進捗について若干の遅れが生じている。現在の法的規制についての見解も考慮して、今後の研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究活動の推進方策については以下2点を考えている。 第一に、2022年度に実施した消費者調査(情緒的訴求の投稿内容における商業的意図の開示の影響)に関する仮説と分析内容の精査を行い、論文投稿を2023年9月頃を目途に完了させることである。上記「研究実績の概要」に記載したように、情報源の区別による消費者行動のメカニズムについて、先行研究を中心に精査し、分析を行っていく予定である。 第二に、申請時に予定していた送り手であるインフルエンサーの情報源特性の精査とその影響メカニズムの検証である。予備調査のデータ収集は完了しており、これらのデータ分析を行ったうえで、我が国のインフルエンサーの情報源特性を詳細に分類していく予定である。そのうえで、2022年度に実施した実験調査と同様の枠組みで検証を2023年秋に行い、便益タグの影響について検討していく。 上記の研究活動を完了させていき、一連の研究を統合する形で、我が国のインフルエンサーマーケティングにおける商業的意図開示の意義について考察を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
実査費用が想定よりも減額する形で実施することができたため。
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