2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13511
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
天野 良明 京都大学, 経営管理研究部, 講師 (40910914)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 合併・買収(M&A) / 合併アノマリー / 会計情報 / M&Aのパフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 合併・買収(M&A)が企業の将来業績へ与える影響について, 投資家がどのように予測を行っているのかをサーベイ調査および実証分析により明らかにするものである。本年度はM&Aに関する情報が開示された際, 投資家がM&Aのパフォーマンスをどのように評価, 予測しているのかについて, サーベイ調査に基づく分析を行った。先行研究の多くは, M&A公表時に投資家がその効果を見誤る可能性を示唆している。本研究は, 投資家が意思決定時に用いる情報の種類と入手経路によって, 判断の正確性にどのような差異が見られるのかを検証した。日本に在住する投資家1000人を対象としたサーベイ調査を行った結果, 次のことが明らかとなった。(1) M&Aの効果を過大評価する投資家 (over-valuers) は, 意思決定にあたり経営者の利益予想やシナジーの見積もりといった情報を重視している。(2) M&Aの効果を過小評価する投資家 (under-valuers) は, 買収対価の支払い手段や, 買収実施企業と対象企業の地理的・文化的な距離といった情報を重視している。(3) 情報の入手経路と過大・過小評価との関連性は見られなかったが, 時間の経過とともにover-valuersが評価を下方修正する際には, アナリストレポート等, 証券会社から提供される情報を重視している。以上の分析結果は, 株式リターンなどを用いて市場全体の反応を分析することに主眼を置いた多くの先行研究と異なり, 個々の投資家の間で情報の利用状況と意思決定の精度に差異が見られることを示唆した点で新規性を有している。また, M&Aに際しての情報開示が投資家の意思決定の正確性に影響を及ぼす可能性を示している点で, 会計基準設定の実務にも示唆を有している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたサーベイ調査および結果の分析が一通り完了し, 国際学会での発表も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
国際学会等で得たフィードバックをもとに論文執筆を進め, 国際学術誌への掲載を目指すとともに, 調査・分析の過程で生じた追加的な課題についても分析を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた分析の一部について, 他の研究課題と共通で実行可能なものが多く存在したことから, データベース契約料やサーベイ調査費用が不要となったため。
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